コイニーとは主にモバイル決済サービスを行なっている会社です。
コイニーは自社の決済で集めたデータを活用して、トランザクションレンディングや企業審査を行うシステム(AI)を開発しました。
目次
コイニーとは?その決済サービスの内容
モバイル決済サービス
コイニーは小口の決済サービスを店舗向け、ネットショップ向けに提供している会社です。
クレジットカード会社と契約を締結していなくても簡単に自社にクレジットカード決済を導入できるcioneyターミナルや、ネットショップが簡単にクレジットカード決済を導入することができるcoineyペイジなどのサービスを行なっています。
コイニーのサービス
1、coineyターミナル
coineyターミナルとは、coineyターミナルという専用のカードリーダーとアプリを立ち上げるだけで、どの店舗でもクレジットカード決済が導入できるサービスです。
初期投資はcoinyターミナルの19800円だけですが、今ならこのお金がキャッシュバックされ、実質手数料0円で始めることができます。
2、coineyペイジ
coineyペイジとは、ネットショップが簡単に決済ページを発行できるサービスです。
顧客が自社の商品を購入したら、coineyペイジで決済ページを作成し、顧客にURLを送信、顧客はURLを開き、coineyペイジ上で決済を行うことで、ネットショップの取引が完了するというサービスです。
決済手数料は3.24%と、通常のクレジットカード決済よりも手数料が安価になっています。
また、外国語にも対応していますので、海外からの注文があっても決済手続きが簡単です。
自社サイトにカード決済ページを作ることは非常にお金がかかりますし、入金の管理も大変ですが、coineyページであれば、とても簡単にどのようなネットショップでも専用の決済ページを作成することができます。
コイニーのトランザクションレンディングエンジンのcoineyエンジンとは?
コイニーはこのように、決済サービスによって様々な店舗やネットショップの決済データを持っています。
このデータを融資に活用できるAIを開発したものがcoineyエンジンになります。
コイニーが持つ取引データを融資に活用
コイニーエンジンはコイニーが決済によって蓄積した取引データを融資に活用するAIです。
AIは蓄積したデータから「いくらまで融資可能か」「いくらまで返済に耐えることができるのか」と言ったことを自動的に判定します。
Amazonや楽天もトランザクションレンディングを行なっていますが、
Amazonトランザクションレンディングや楽天のトランザクションレンディングは自社のショップサイト内でデータしか活用できません。
主にトランザクションレンディングとはネットショップが活用できるものです。
しかし、例えばcoineyターミナルを導入している店舗では、実店舗でのクレジットカードでの売上も審査材料になるため、ネットショップを出していない会社でもcoineyエンジンであればトランザクションレンディングによって融資を受けることができるという幅が広がります。
顧客の評価を融資に活用
coiney内部に蓄積したその店舗の評価なども企業の評価に繋げることができます。
銀行融資には数字から判断する定量評価と、経営者との面談などから判断する定性評価という2つの評価があります。
※定量評価とは?定性評価とは?企業格付け決定のプロセスと銀行融資
定性評価は評価する銀行員の主観が入ってしまうため、これまではそれほど審査には活用されてきませんでしたが、AIが生の顧客の声を評価するcoineyエンジンは「客観的な定性評価」を行うことができます。
銀行が知り得ないデータを融資に活用できる
coineyは顧客の生の声やタイムリーな売上など、銀行が知り得ない店舗の動きを知ることができます。
決算データだけではこの先伸びるかどうかわからない企業も、微妙な売上の変化でその店舗の今後の伸びの予測を立てることも可能です。
日々の決済データが審査に生かされるため、年に1回決算書を見るだけで、企業の業況を判断している銀行よりもより細かく企業の動向を掴むことができるのです。
コイニーのデータが企業審査にもなる
企業そのものの評価もcoineyエンジンは行うとしています。
しかし、coineyは今何が売れているか、これから伸びそうな商品は何かなどと言った店舗の生の細かい情報を掴むことができるため、銀行のかなりざっくりとした企業審査よりも、coineyエンジンの方がよほど正確に企業の実態を把握することができると期待できるのではないでしょうか。
2017年9月プロトタイプ完成
coineyエンジンは2017年にプロトタイプが完成したと発表したばかりです。
まだ実用化はされていませんが、今後は金融機関に融資システムとして提供される予定です。
したがって、コイニーが融資を行う訳ではありません。
コイニーはシステムを金融機関に提供し、融資は金融機関が行います。
コイニーエンジンと銀行融資の比較
トランザクションレンディンというのは取引実績に基づく融資ですが、コイニーのトランザクションレンディングであるcoineyエンジンは銀行とどのように異なるのでしょうか?
銀行のように過去の情報にとらわれない
銀行が主な審査材料としているのは企業の過去の実績である決算書です。
しかし、coineyエンジンは決算書からはデータは拾わずに、コイニーでの決済実績を基に審査を行います。
いくら売上が上昇していても、過去に大きな赤字を出して債務超過となったがために融資を銀行から受けることができない企業はたくさんありますが、coineyエンジンであれば「融資可」という回答がでることもあります。
また、審査材料の売上データは日々更新されますので、昨年は赤字であった企業も、今年売上を伸ばせば、coineyエンジンでは融資可能と判断されることもあります。
銀行のように、1年以上前の実績に頼る審査ではなく、タイムリーな情報を基に審査を行うことができるのです。
粉飾の心配がない
銀行が融資審査の頼りとしているのが決算書ですが、決算書には粉飾がつきものです。
しかし、決算書に頼らない審査を行うcoineyエンジンの情報は全て真実の売上データという情報です。
経営者や会計担当者の恣意的な意図が全く入らない売上データを使用するため、客観的な評価を行うことができるのです。
創業間もない企業でも融資対応可能
銀行が審査材料とするのが過去の決算データです。
創業間もない会社はこのデータがないためお金を借りにくいと言われています。
実際のところ、創業後1年以内は創業資金を借りることができますが、創業後1年を超えると3年経過するまではお金が借りにくいのが実情です。
しかし、トランザクションレンディングでは過去の決算データは審査に不要ですので、創業間も無く決算書という銀行にとっての最大の審査材料が少なくても、売上さえ順調であれば融資を受けることができる可能性があります。
創業後すぐに売上が急拡大し、増加運転資金が必要になった際には銀行よりもトランザクションレンディングの方が利用しやすいのではないでしょうか?
融資までに時間がかからない
日々の取引データが審査材料となり、AIが審査を行うcoineyエンジンでは審査の時間はほとんどかかりません。
ただし、融資を行うのが金融機関ですので、AIの審査が終わったあと、その審査の内容が正しいかどうかの確認にまた時間がかかってしまうのではないかと、筆者は危惧しています。
とはいえ、審査の時間が圧倒的に早くなることだけは間違いありません。
現在の銀行の事業資金融資が早くても1週間程度の時間がかかることと比較すると、AIの審査自体はおそらく数秒で完了するため、これまでの銀行融資のデメリットであった「迅速な資金用途に対応できない」という点をcoineyエンジンが解決する可能性があります。
審査資料が不要
銀行の審査では決算書の提出はもちろん、資金繰表や会社の売上や仕入れの実績を示す書類など様々な資料が必要です。
トランザクションレンディングでは審査材料はすでに蓄積されているデータですので書類の提出は基本的に不要です。
将来的には財務データとの連携も可能
コイニーは取引データを会計ソフトに送り、自動的に記帳してくれるというサービスも行っています。
つまり、会計ソフトとも連携できるので、今後は会計データも審査材料とすることができるのではないかと期待もできますね。
財務データを基にした審査とトランザクションを基にした審査が融合できれば銀行が不要となってしまうのではないかと危惧してしまいます。
まとめ
小口の決済サービスを行なっているコイニーの審査システムであるcoineyエンジンは、コイニーでの決済データを基に融資を行うトランザクションレンディングエンジンです。
金融機関にcoineyエンジンが提供されれば、銀行はこれまで競争相手ではなかったAmazonや楽天といったような、大手ECサイトと競争して行かなければならなくなります。
整理整頓が行き届いている会社かどうか判断するために、会社のトイレをみるようになどと言われ、そのような目線があるからこそ銀行はこれまで独占的に企業向け融資を行ってきました。
しかし、今後はそのような目利き力以上の微妙な変化も企業の決済状況などから判定できるかもしれません。
細かい経営を行っているかどうかは、受注後すぐに商品の発送を行っているかなどで知ることができますし、数字に見えない企業の評価は口コミやSNSの分析などから簡単に行うことができるためです。
銀行の目利き力という優位性は今フィンテックの発展によって失われつつあるのです。
銀行にcoineyエンジンが導入されれば銀行にとって融資の選択肢が増えることは間違いありませんが、情報処理に特化したIT企業と銀行が融資という分野で戦っていかなければならず、銀行は今後ますます優位性がなくなってしまうのではないでしょうか?