アマゾンに出品している法人向けの融資サービスがAmazonレンディングです。
アマゾンが、このトランザクションレンディングに分類されるAmazonレンディングを始めたのが2014年。
楽天も楽天市場のECショップ向けに事業資金融資を行なっていますが、決算書などが不要なトランザクションレンディングの形態を打ち出したのが2015年であることを鑑みれば、Amazonレンディングはまさに、日本のトランザクションレンディングの走りと言えるでしょう。
目次
Amazonレンディング アマゾンレンディング商品概要
融資額 | 10万円~5,000万円 |
金利 | 9.9%~13.9% |
融資期間 | 3ヶ月、6ヶ月 |
申込資格 | Amazonマーケットプレイスでの出品法人 |
Amazonレンディングの特徴
融資までの時間が早い
Amazonレンディングの融資までの期間は、初めての利用か2回目以降の利用かによって異なります。
初めてAmazonレンディングを利用する場合 | 申込から融資まで最短5日 |
Amazonレンディングの利用が2回目以降の場合 | 申込から融資まで最短3日 |
銀行から事業資金を借りる場合には早くて1週間程度、遅い場合には3週間程度時間がかかることも珍しくありません。
この点、Amazonレンディングは銀行融資よりも急ぎの資金繰りに対応していると言えます。
返済期間が短期
Amazonレンディングは返済期間が3か月と6か月の2種類だけとなっています。
このため、短期の資金繰りに対応した運転資金の融資となっています。
AmazonレンディングはAmazonマーケットプレイスに出店している法人だけの融資となっていますので、Amazonでの商品の仕入れ資金に利用できるような仕組みになっています。
そのため、資金ギャップも10日ほどしかないので、Amazonで出店している限りは資金繰りのズレはそれほど発生しません。
このため、Amazonレンディングは資金ギャップを埋めるためというよりも、年末年始などの売り上げが多い時期に一括で大量に仕入れて、1、2ヶ月かけてAmazonで販売するという場面に適しています。
Amazonレンディングは不足の運転資金を補うというよりも、セール時期の増加運転資金に利用することに適しているのではないでしょうか?
その使い方であれば、3か月ないし6ヶ月の返済期間があれば充分であると思います。
審査の手法が独特
Amazonレンディングが銀行融資と決定的に異なる点は審査手法です。
Amazonレンディングの審査はAmazonでの売上の推移や、Amazonでの顧客の評価などを基準に行われます。
実際にAmazonに出品していると、過去の売上統計から見て「この在庫だと、あと◯◯日で在庫が不足する」というようなことを、メールや「セラーセントラル」という管理画面で知らせてくれます。
このように、Amazonは出店店舗ごとに売上と在庫をデータ化して「あとどのくらいで在庫が不足するか」などを管理しています。
ということは、あとどのくらいの運転資金が必要になるのかを知ることもできるということです。
また、数字には見えない付加価値も店舗の評価から知ることができます。
実際に、私たちもネットで買い物をするときには、
その店舗の評価を参考に購入を決めることが多いのではないでしょうか?
評価が高い店舗は、今後売上が伸びる可能性がありますし、過去の売上の伸びの推移を見て「これくらい売上が拡大しそう」ということも推測可能です。
このようにAmazonレンディングは、過去の売上からその店舗の営業規模を知ることができるだけでなく、評価や売上の伸び率によって、今後の売上の予測まで立てることができるため、そのようなデータから融資金額が適正かどうかを判断することができるのです。
返済はAmazonマーケットプレイスの売上から源泉徴収
Amazonレンディングの返済は、Amazonマーケットプレイスでの売上から返済金が差し引かれることになります。
このため、Amazonにとっても取りっぱぐれがないシステムとなっています。
また、返済期間は最長で6ヶ月ですので、基本的にはAmazonマーケットプレイス内で必要な運転資金しか借りることはできないでしょう。
6ヶ月間における会社経営に必要なすべての運転資金が1億円で、Amazonで必要になる経費が1000万円しかなかったら、会社すべての必要経費をAmazonの売上だけで返済することは困難になるためです。
また、AmazonレンディングもAmazon内の実績しか審査材料としないため、「Amazonマーケットプレイス内で必要な資金をAmazonマーケットプレイス内の実績や評価を元に融資する」というスキームになっています。
もちろん、融資まで最短3日ですので、小口の急な資金繰りにも活用することも可能です。
繰上返済手数料無料
Amazonレンディングは繰上返済は無料です。
1ヶ月で、Amazonでの増加運転資金を回収できたとすれば、回収できた段階で、早期に繰上返済を行うことも可能です。
運転資金は短期で借りて短期で返済し、必要になったらまた借りて、短期で返済を繰り返すことがよいとされています。
Amazonレンディングはこのような良い資金繰りを「繰上返済手数料無料」という付加価値でもって実現することができるのです。
Amazonレンディングの審査
銀行審査とは全く異なる
銀行融資の審査は、決算書を提出し経営者と話をして、その会社の安全性や将来性を評価します。
この際には、決算書の他にも売上の証拠や根拠を示す様々な書類が必要になり、かなり手間がかかります。
しかしAmazonレンディングはこのような実績はすべて過去の売上データとして残されていますし、数字には見えない定性的な評価も、Amazonマーケットプレイス内の評価で判断できてしまいます。
スコアリング審査とは異なる
「システムが自動的に審査を行う」というと、個人のカードローンや新銀行東京がただ決算書の数字だけをコンピューターに打ち込んでいたスコアリング審査を連想する人も多いと思います。
しかし、Amazonレンディングの審査はただのスコアリング審査とは異なります。
決算書の内容には粉飾決算もありますし、粉飾とまでは行かなくても大抵の企業が「節税のため」とか「赤字にならないため」というような何かしらの意図を持って決算書に手を加えていると言われています。
つまり、決算書は100%信用できるものではないのです。
しかし、Amazonレンディングの審査材料となるのは、実際の売上のデータであり顧客の生の声です。
このため、スコアリング審査のように単純な法則的なものでもなく、粉飾の心配もありません。
正しい情報から生きた審査をシステムが行うのがAmazonレンディングの審査です。
まさに、新しい融資の仕組み「トランザクションレンディング」です。
FBAを利用している法人は在庫に担保の設定も
AmazonにはAmazonの工場に在庫を保管して、注文が入ったらAmazonが顧客に発送を行なってくれる、FBAというサービスがあります。
FBAを利用してAmazonに大量に在庫を保管している会社は、Amazonの倉庫内部に保管している在庫を担保にAmazonレンディングから融資を受けることができます。
たとえ返済ができずに担保が差し押さえになっても、世界一のネット内での販路を持つAmazonなら、その在庫をさばくことができるためです。
銀行にも在庫を担保に融資を受けるABLという融資がありますが、銀行内部に担保を保管するわけでも、銀行がその在庫をさばくことができるわけではありません。
しかし、Amazonレンディングの担保はAmazonがさばくことができるため、担保評価を銀行のABLよりも正確に行うことができるのです。
これは、絶対にAmazonしかできません。
同じEC系の楽天でもヤフーにもできない、実際の倉庫を持っているAmazonにしかできないことです。
出店者側から見ても、大量に仕入れた在庫がさばききれずに返済ができなくなってしまっても、その仕入れにかかった在庫がAmazonに取得されるだけになるため、会社経営にもそれほどリスクがありません。
これぞ、世界最大のショッピングサイトであるAmazonでしかできない融資と審査・担保評価です。
書類の提出がない
Amazonレンディングの審査材料は、Amazonで出店している段階ですでにAmazon内部に蓄積されています。
このため銀行審査のように、わざわざ融資の申込のたびに膨大な書類を用意するという手間がかからないという点も特徴です。
Amazonレンディングのメリットとデメリット
メリット① キャッシュフローが最大の審査材料に
メリットはなんといっても、過去のAmazonマーケットプレイスでの販売データを元に融資をしてくれることです。
銀行のように、自己資本比率や流動比率などの財務状態による審査ではなく、生きた売上のデータと顧客の評価を元に審査をするため、過去に大きな赤字を出し財務状態が悪く、銀行から融資を受けることが難しい企業でも融資を受けることができる可能性があります。
メリット② 銀行の審査より簡単で非対面
銀行の事業資金の審査は用意しなければならない書類の数が多く、何度も銀行に足を運ばなければならない点が面倒です。
しかし、Amazonレンディングの審査は、Amazonでの過去の売上データや顧客の評価を元に審査をするため、書類を用意する手間も審査担当者と面談する手間も必要ありません。
審査の概念がこれまでの銀行融資とは根本的に異なるため、かなり簡単にお金を借りることができます。
デメリット① 金利が高い
銀行の事業資金融資の金利は、信用保証協会の保証付融資で2%~4%程度が相場です。
しかし、Amazonレンディングの金利は9.9%~13.9%ですので、金利的にはAmazonレンディングはなかなかの高金利と言えます。
数字だけ見れば間違いなく銀行融資と較べてのデメリットではあるものの、Amazonレンディングは短期資金しか対応していないため、実際の利息負担は長期資金を借りる場合とそれほど変わらないと言えます。
1,000万円を金利9.9%で6ヶ月間借りた場合の利息は、495,000円です。
1,000万円を金利2%で5年間(元金均等)借りた場合の利息負担は5年間の合計で508,306円です。
銀行は信用保証協会の保証付融資を長期資金で対応したい傾向にあるため、短期の利用で済むのであればAmazonレンディングの方がじつは利息負担は少なくなるのです。
※銀行の保証協会付き融資(マル保)と銀行プロパー融資の違いを比較
デメリット② 運転資金にしか利用できない
AmazonレンディングはAmazonマーケットプレイス内で必要な運転資金を短期で貸し付ける仕組みです。
このため、設備資金などには対応できません。
運転資金しか利用できないところに、Amazonレンディングの審査の特徴が生きてくるので当たり前と言えば当たり前です。
設備資金を融資する場合には、企業の財務状況等も判断しなければならず、そうなってしまうとAmazon内部に蓄積されている会社のデータだけでは審査ができないためです。
このため、設備資金を利用したい際には、銀行や日本政策金融公庫へ相談に行く必要があります。
まとめ
Amazonレンディングは、銀行審査の概念を180度変える融資であり、トランザクションレンディングの代表例です。
返済はAmazonマーケットプレイス内での売上から行い、審査はAmazonマーケットプレイス上のデータを元に行われるため、Amazonも会社の売上規模に合わない無理な融資はしないと考えられます。
規模に見合った融資しか受けることができないため、おそらくそれほどリスクもありません。
「Amazonでもっと売上を拡大したい」と考える事業者の方はAmazonレンディングで増加運転資金の融資を受け、規模拡大を目指してみてはいかがでしょうか?