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急ぎの資金繰りに即日融資の魅力
企業を経営していると必ずつきまとう悩みが「資金繰り」です。ですが何がしかの要因で資金繰りがつかない局面もあるでしょう。
それが事前にわかっていれば準備も可能ですが、急に発生することもあると思います。
そんな時、あなたの事務所に一枚のファックスが。そこには「即日500万円融資可能!」との文字が並びます。
「とりあえず今日の支払いが間に合えばそれでいい」との考えから電話をかける‥。
状況からすれば仕方のない行為と言えそうです。
しかし、その行為が対金融機関にとってどのような影響を及ぼすのかは知っておかなければなりません。金融機関以外から借入をすることは、経営者が思うよりずっと重大な意味を持ってしまいます。
資金繰りは経営者の能力を表す
そもそも「資金繰りがつかない」という状況はどのような時発生するのでしょうか。
当然支払い資金が足り無い時となりますが、企業において支払いのタイミングはほぼ決まっていると思われます。
- 給与・賞与支払
- 仕入資金等売上原価の支払い(手形・小切手決済)
- 諸経費の支払い
- 借入金返済
- 納税
経常的に発生するのはこれくらいでしょう。賞与と納税以外はどれも毎月の支払いであり、臨時に発生するものではありません。
またこれらは支払い予定額が事前に把握できる種類の支払いであり、唐突に大きく増加することはあり得ません。
つまりは従前に予定されていた支払いの資金が不足するということは、原則起こり得無いはずなのです。
起こり得無いことが発生するということは、基本的に人的要因が大きい。つまりは経営者の準備不足、または経営の杜撰さが原因と言えます。
ノンバンクからの借入に対する信用金庫の見方
支払わなければならない費用が前から確定していて、それに対応ができない経営者に対して、信用金庫は以下の見立てをすることになります。
・資金繰りに無関心
・資金繰りを軽視している
・CF(キャッシュフロー)を理解していない
・リスクを軽視している
・計画性がない
・場当たりな経営 など
総じて「経営能力」を疑うことになります。加えてノンバンク系から融資を受けた場合は、以下の見立てが追加されます。
・コスト意識が低い
・危険性に対して鈍感
・短絡的 など
つまりは「人物像」を疑うこととなります。
ノンバンク系は即日融資をうたいますが、それに申し込む層は金利意識が低いか、金利が問題とならないくらい焦っているかの顧客となるため金利は高くなります。
融資の原則として、融資実行まで時間がかかればかかるほど金利は低くなり、逆にすぐ融資実行できるものは高くなります。住宅ローンとカードローンの違いを想像されるとわかりやすいでしょう。
原則に照らせば、即日融資は金利が最も高くなるはずで、実際に高い水準となっています。貸し手のことをほぼわから無い状態で融資する側面もあるので当然です。
信用金庫と比較して明らかに高金利であるのにそれを気にしないコスト意識の低さ。会ったこともない相手から高額の借入を「即日」で決めてしまう浅はかさ。ノンバンク系から借りてしまう経営者に対し、良い印象を抱く要素は何もありません。
資金繰りに対する計画性のなさ、およびそれを解決するための手法の安直さなど、場当たり的かつ無思慮の経営者に対し信用金庫に限らず金融機関は強く警戒します。
お金はただ調達すれば良いものではなく、調達の仕方に経営者の「甲斐性」を見ているのです。
実際にノンバンクから借り入れした場合どうするか
とは言え、資金繰りへの焦りからつい借りてしまった、という経営者もおられると思います。
資金繰りを把握してい無いわけではなく、しっかりと把握し準備していても、例えば大口取引先からの入金の遅れや約束手形のサイト長期化など、自社ではどうしようもない理由により資金繰りがショートすることもあります。
経営者の落ち度を前述しましたが、実際には売上入金の突然の遅れが資金ショートの理由としては多いと感じます。
実際にノンバンク系から借入をしても、決算書に記載されない限り信用金庫は明確にはわからず、決算期までに完済してしまえば決算書に乗ることはありません。
ですが、借入れた資金が信用金庫の口座に振り込まれた場合は把握される可能性は高いと思われます。高額の振込はチェックしているはずですし、明らかに通常の取引業者でない先からの振込みについては、信用金庫は違和感を持つと思います。
ノンバンク系からの借入を行なった場合、おすすめの対応は信用金庫に正直に伝えることです。
資金繰りがつかなかった理由や、時間的制限からつい借入をしてしまったことを正直に話せば、大抵は理解してもらえるはずです。平素から付き合いがあるのであれば、相手が銀行の場合よりも地元密着を謳う信用金庫の方が事情を汲んでもらいやすいと思われます。
前述したように、信用金庫としては資金繰りのグリップの甘さと、危機意識の低さを問題視し、要注意な経営者との見方をしますが、とりあえず今後の資金繰り管理の徹底を行い、融資相談は事前に相談を行うことを口頭で伝えるだけでも印象は変わります。
ノンバンク系からの借入は当然違法ではない借入で、借入れることには何ら後ろめたいことはありませんが、信頼関係の中で長期に自社を支援してくれる存在としては信用金庫に軍配が上がります。
たとえ合法な資金調達であっても、メインバンクからの信頼を失う行為はすべきではないでしょう。
ノンバンクから借りなくても済む体制を作っておくことが重要
会社を経営していれば、不測の事態が起こることは十分予想されますし、実際起きてしまいます。
資金繰りは十分に把握しており、資金ショートは起こり得ない状態であっても、取引先の倒産や支払い遅延など、自社努力では如何ともしがたい要因により資金繰りがショートすることは十分考えられます。
それまで見越して会社に現預金を十分にプールできていれば問題ないと思われますが、そうでない場合、まさかに備えておく必要があります。以下に対策を記載します。
当座貸越を設定する
あらかじめ決まった金額(極度額)まで即日借入ができる枠を設定するものです。各金融機関で取り扱っています。
種類としては、当座預金がゼロを超えて利用できるもの(01当座貸越)、通帳を作成し借入用の伝票一つで借入ができるもの、カードが発行されATMにて借入ができるものなどがあります。
伝票式のものは窓口にて手続きをする必要があり休業日は対応できませんが、カード式は休日関係なく利用できます。
極度額内であれば即日・全額借入れる事が可能であり、不測の事態に即対応できる点がメリットです。
極度額の目安は業種によりますが、一般的に月商の2ヶ月分が目安となります。
金利は、その利便性から手形貸付や証書貸付よりも高くなります。
担保保証については会社の信用力によりますが、各地の信用保証協会の保証を受けることにより担保がなくとも契約できる商品があります。
当座貸越は利用残高に対して利息がかかる商品であり、利用額ゼロであれば利息はかかりません(保証協会利用の場合は保証料は極度額に対して必要)。
今は必要なくとも「転ばぬ先の杖」で契約しておくことをお勧めします。
注意点としては、利用残高がゼロであっても、金融機関としては極度額分を融資したと見るため、借入余力を奪います。過度に大きな額の極度額を組む必要はないでしょう。
個人から会社への貸付
いざという時に個人の金融資産を取り崩して会社へ貸し付けることは、よく見られる資金繰りの解決方法です。
こちらはノンバンク系からの借入と違い、金融機関は問題視しません。法人個人が一体となっている中小企業によくある資金調達だからです。
ただ、個人の金融資産が十分あれば良いですが、ない場合は個人が資金調達をする必要があります。
その際に銀行系カードローンの枠を事前に作成しておき、いざという時に個人でカードローンを使用し会社に貸し付けるという方法もあります。
注意点としては、そのカードローンが事業性資金使用不可を謳っている場合です。資金使途違反は一括返済を求められる場合がありますので、事前に確認の上、借入を行うようにしましょう。
約束手形・小切手の店頭提示を延期してもらう
すでに降り出し済みの約束手形や小切手の店頭提示を待ってもらうことを支払い先に依頼します。
資金ショートで最も回避しなければなら無いことは、約束手形・小切手の不渡りです。
不渡りを出すことの影響は多大であり、金融機関は一切融資をしなくなります。また既存融資の一括返済を求められる可能性もあります。
取引先に約束手形・小切手の店頭提示を待ってもらえば不渡りは防げますので、依頼する価値はあります。
ですが、実質的に資金ショートを起こしている会社だと取引先にバレることになり信用は失墜しますので、最後の手段と認識してください。
よほど融通がきく相手方で、なおかつ守秘義務を遵守してくれる相手方限定とした方が良いでしょう。
急ぎの資金繰りでノンバンクから借入した事業者 まとめ
資金ショートの可能性はどんな優良企業であっても想定しておかなければならない問題であり、どの企業もまさかに備えセーフティーネットを張るのが常識です。
であるため、資金ショートの局面でなんの備えもなく、行き当たりばったりの資金調達としてノンバンク系を安易に利用する経営者に対し、信用金庫は警戒し、その後の取引に多大な影響を及ぼすことになるのです。
一時的に難局を乗り切った代償として、長期的な信頼関係を損なうことは経営上大きな損失です。
信用金庫と事前に相談し、まさかに備えた資金繰りの確保を行う事が経営の重大事項と認識しましょう。