ブラックは借入できないと多くの人が思っています。
ブラックとは、過去の返済に関するトラブルが信用情報に記録された人を示しますので、トラブルの情報である金融事故情報が記録された人がお金を借りることができないのは、当然と言えば当然です。
では、法人の場合はどうなのでしょうか?
法人融資を受けたい企業の経営者の信用情報がブラックでも必ずしもお金を借りることができない訳ではありません。
信用情報が重視される、個人融資と法人融資では審査の基準が全く異なるためです。
法人融資において、経営者個人が融資を受けることができるケースについて考えていきます。
目次
法人融資と個人融資の違い
法人融資と個人融資では、審査のポイントが全く異なります。
まずは法人融資の着眼点と、法人が個人と同じように事故を起こした場合のトラブルについて解説していきたいと思います。
法人融資はあくまでも事業内容を審査する
法人融資で重視されるのは、あくまでも決算書の内容です。
個人の信用情報には、銀行や消費者金融からの借入について詳細に記載があります。
法人の借入についての詳細な明細は、決算書の中に書かれています。
また、法人融資というのは、あくまでも法人が事業を運営するために必要な資金ですので、その資金が必要になるかどうか審査を行うのは、決算書を根拠に行うためです。
個人融資であれば、重視されるのは「返済可能かどうか」ですが、法人融資においては「返済可能かどうか」に加え、「融資によって会社の業況が上向くかどうか」ということが審査されます。
したがって、法人融資では決算書から銀行員が法人の実情や将来像を読み取る審査を行います。
法人には信用情報が存在する?
よく「法人融資の返済に遅れるとブラックになり、信用情報に傷がつく」などと言う人がいますが、法人には信用情報は存在するのでしょうか?
法人の信用情報を集めているのはJICCだけです。
つまり、消費者金融から法人がお金を借りて、延滞すると信用情報に傷がつきます。
銀行融資を延滞した、法人名義のクレジットカードカードを延滞したなどの場合には信用情報には登録されません。
後述しますが、一般の銀行が行う法人融資に関しては銀行はJICCへ法人の信用情報の照会は行わないため、審査にはほとんど影響はありません。
消費者金融から法人融資を受ける場合だけは関係すると考えておきましょう。
法人が事故を起こしてもペナルティはないの?
では、法人が銀行などでトラブルを起こした場合にはペナルティはないのでしょうか?
そのようなことはありません。
例えば、手形の不渡りを出した場合には銀行取引停止処分になり、どこの銀行や信用金庫からもお金を借りることはできなくなります。
また、信用保証協会の保証付融資を延滞して、保証協会から代位弁済となった場合には、信用保証協会の保証を以後受けることができなくなります。
中小企業が信用保証協会からの保証を受けることができないということは、実質的には銀行や信用金庫から融資を受ける手段がなくなるということです。
このように、法人に対してもペナルティは用意されてあるのです。
法人融資が連帯保証人を取る理由
法人融資の際には、代表者が連帯保証人になることが一般的です。
経営者の中には「自分はブラックだけど、自分が保証人になったら、法人融資を受けることができないのではないか」と心配されている人も多いのではないでしょうか?
そのような方のために、法人融資で代表者が連帯保証人になる意味についてご説明しておきましょう。
経営者がお金を持って逃げないため
連帯保証人とは、借主と同じ返済責任を負うものです。
債務者は連帯保証人に対して、借主にお金があっても、借主よりも先に請求することも可能になります。
一般的に連帯保証人に先に請求が来ないのは、社会通念上、連帯保証人よりも先に借主に請求しているだけの話で、法律的には連帯保証人は、借主と全く同じ返済義務を負っています。
このため、「連帯保証人にはなってはいけない」と言われるのです。
連帯保証人になった時点で、人の借金を背負っていることと全く同じになるためです。
つまり、法人融資の際に経営者を連帯保証人としておくことで、法人名義で借りたお金を経営者が持ち逃げしてしまったとしても、経営者は自分の借金を持ち逃げしただけになります。
このため、法人融資で借りたお金を持ち逃げするリスクが非常に少なくなります。
中小企業においては、経営者が資金繰りや銀行との交渉を一手に担っていることが多いので、経営者を連帯保証人とすることが一般的なのです。
経営者に責任感を負わせるため
銀行とすれば、借りたお金をしっかりと返済してもらう必要があります。
しかし、経営者が経営に対して無責任で「会社の借金だから返せなくても自分には関係ない」という態度であれば、銀行とすれば、返済が危ぶまれることになります。
経営者を連帯保証人とすることで、経営者にとっては自分の借金と同じですので、借りたお金に対して責任を持つことができるのです。
あくまでも返済するのは事業から
銀行は経営者保証を受けたからと言って、経営者の個人資産から返済をしてもらおうとなど考えていません。
銀行は、企業の業況や財務状況に対して審査を行い、いかに経営者に資産があろうと、会社の業況が非常に悪い企業に対して融資を行いません。
つまり、経営者に対して返済は期待しておらず、あくまでも持ち逃げ防止と、会社経営と借りたお金に対する責任感を持ってもらうために経営者保証を行っているのです。
・最近は経営者保証のない法人融資も
最近は、中小企業に対しても経営者保証をつけない融資が増えてきています。
経営者保証を外すためには、業績良好で、会社の会計と個人会計がしっかりと区分されている場合には、経営者保証を求められないこともあります。
このように、法人融資でも経営者と法人に対して一定の信頼をおくことができる場合に関しては、必ずしも経営者保証をつける必要がないケースも存在するのです。
ここからも分かるように、経営者保証は経営者個人からの返済をあてにして行われるものではないということです。
法人融資の保証人の審査
経営者保証は経営者の返済能力を必ずしもあてにしていないということは、結論的に言えば、経営者がブラックでも法人融資を受けることができるということです。
そもそも銀行は経営者がブラックかどうかということすら知る由もありません。
法人融資における経営者の審査はどのように行われるのでしょうか?
信用情報は照会しない
保証人の審査の際には、経営者個人の信用情報は照会しません。
このため、仮に経営者個人がブラックのような場合でも、銀行は分からないまま法人融資を実行するのです。
資産状況は加味される
連帯保証人の資産状況などは、多少は審査で加味されます。
法人融資をする際に、経営者個人の不動産を担保にすることはありますし、融資ができるかどうか微妙な法人の審査は「経営者の個人預金が多いから」などという理由で、審査に通過できることも珍しくありません。
経営者個人が仮にブラックでも、預金や不動産などの資産がある場合には、むしろ法人融資を受けることができる場合があるのです。
法人の経営状態=経営者の返済能力となるのが一般的
法人融資の保証人の審査は、実際に審査の現場ではそれほど行っていません。
中小企業においては、法人と経営者の会計が同じになっていたり、企業の経営が苦しい時には、経営者の個人の預金を支出して、会社の運転資金を支払っていることなどはよくあります。
つまり、銀行が法人の保証人を見る目線は、「会社が儲かっていれば、経営者も余裕がある」「会社が苦しければ経営者も苦しい」と判断することが一般的です。
銀行が融資をしようとしている企業は、それなりに業績が堅調であることが一般的ですので、連帯保証人の経営者が例えブラックであろうとも、それなりの返済能力があるだろう程度にしか判断していないのです。
ビジネスローンだけは別
先ほども述べたように、ビジネスローンだけは別です。
一般的にはビジネスローンは経営者の信用情報を照会しますので、経営者がブラックで、会社にも十分な返済能力が認められない場合には審査に通過することが難しくなります。
【結論】一般的な法人融資は経営者がブラックでも借りられる
結論的に言えば、銀行から借りる信用保証協会付またはプロパー融資などの一般的な法人融資は、基本的には経営者がブラックでも借りることができます。
一般的な法人融資は、法人経営者の信用情報を照会しないためです。
【例外】経営者がブラックで法人融資が受けられない3つのケース
経営者がブラックでも基本的には法人融資を借りることができます。
しかし、以下のいずれかに該当してしまった場合には、経営者個人の信用が法人融資に悪影響してしまうことがあります。
以下のケースでは、銀行は法人代表者がブラックであるまたはブラックの可能性が高いと判断してしまうためです。
法人融資を申し込んだ銀行で、過去に経営者個人が事故を起こした
法人融資を申し込んだ銀行で、過去に経営者個人が金融事故を起こした場合は法人融資を受けることは難しいでしょう。
過去に返済をしなかった人が経営する法人に対して融資をしても、法人からの返済も期待できないと考えるのが普通です。
このような人は、過去に個人でトラブルを起こしたことがない銀行で融資を受けるようにしましょう。
不動産が差し押さえられている
個人の借入金を長期的に延滞して、個人が持っている不動産が差し押さえられているような場合も、法人名義で融資を受けることは難しいでしょう。
必ずではありませんが、銀行は企業と初めて取引をする際に、経営者や企業が所有する不動産の登記を取ることがあります。
この際、経営者個人の資産が差し押さえられているということがわかれば、銀行からすれば、必然的に融資取引をすることはリスクが高いという判断になり、法人融資を受けることができないことになります。
税金の滞納がある
融資の審査では、法人と連帯保証人になる経営者個人の納税証明書の提出が必要になります。
この際、経営者が税金を納めていない場合には、納税証明書が出ませんので、融資を受けることはできません。
反社会的勢力という意味合いでのブラックの場合
法人経営者が反社会的勢力の構成員である場合には、銀行から法人名義であっても融資を受けることはできません。
取引前に反社確認は必ず行われる
銀行は、融資取引を行う前に、法人とその代表者家族の反社会的勢力の確認を行います。
銀行内部には、反社会的勢力構成員のリストがあり、法人融資の際には、そちらのリストから反社の確認を行うものと思われます。
ここで、反社会的勢力であると確認されてしまった場合には、法人名義であっても融資を受けることはできません。
融資以前に口座が作れない
そもそも、銀行は口座を開設する際に、反社会的勢力の確認を行っています。
反社会的勢力に口座を作成してしまうと、犯罪利用されてしまう可能性が高くなるため、この確認は必ず行っています。
ここで、反社会的勢力の構成員と、反社会的勢力の構成員が関係する法人ということが分かった場合には、口座の開設を断っています。
つまり、融資取引以前に、口座の作成すら不可能なのです。
法人融資ブラック まとめ
法人経営者の個人信用情報がブラックでも、プロパー融資、信用保証協会の保証付融資は、銀行が経営者の信用情報を調べることはないため、法人の業況が融資をしても問題ないと判断されれば融資を受けることができる可能性は高いと言えます。
つまり、基本的に法人融資に経営者個人の信用情報は関係ないのです。
しかし、これはあくまでも銀行が、法人経営者が個人的に過去にお金に関するトラブルがあったことを知らない場合です。
信用情報は照会しなくても、税金の滞納、資産の差し押さえ、法人融資を申し込んだ銀行との過去のトラブルなどがあった場合には、銀行は「法人経営者がブラックかもしれない」「支払いでトラブルがあった」ということが分かってしまいます。
このような場合には、法人融資を断れてしまうことがあります。
要するに、法人融資においては、一般的に経営者個人がブラックということは知られることがないので法人融資を受けられる可能性が高いというだけで、知られてしまった場合には融資を断られてしまう可能性が高いと考えましょう。
なお、反社会的勢力の構成員である場合には、法人融資はおろか個人も法人も銀行口座を作成することすらできません。