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運転資金 つなぎ資金 設備資金の資金繰り

運転資金と設備資金の返済財源 返済原資は営業キャッシュフロー?

運転資金と設備資金の返済原資の考え方
事業資金には、会社の経常的な運転を行うために必要な資金である運転資金と、会社に設備投資を行うための資金である設備資金という2つの資金があります。
これらの資金は当たり前ですが、「返済できる」という見込みを銀行が持たない限りは融資に応じてもらうことはできません。

返済の元になる資金=返済財源(返済原資)
そして、それぞれの返済原資への考え方は異なります。
そのため、運転資金を借りることができるからといって、設備資金を借りることができるとは限らないのです。
運転資金や設備資金を借りるためには、それぞれの資金に対応した返済原資があると考える必要があります。
この記事では、運転資金と設備資金の返済原資の考え方の違いについて解説していきます。

 

目次

一般的な返済原資の算出方法

一般的に返済財源は以下の式で簡単に計算することができると言われています。
一般的な返済原資の計算式:返済財源=税引後利益+減価償却費
税引後の利益とは、売上から経費や税金を差し引いた会社に残った正味の利益です。
ここに、実際には現金が流出しない費用である減価償却費を加えた数字が「会社が翌期に回すために残った正味のお金」ということになります。

つまり、一年間の営業を終えた後の営業キャッシュフローはいくらになるのかを求め、会社に余っているお金は返済原資と考えることができるのです。
これは営業キャッシュフローを厳密に見ていくともっと細かい項目も入ってくるが:一般的な企業で採用されている
間接法では、当期純利益から現金収支を伴わない損益を加減する形で間接的に営業活動によるキャッシュ・フローを求めることになります。
間接法:
税引前当期純利益に減価償却費などの非資金損益項目、有価証券売却益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目を加減して表示する方法です。
から算出されると考えて良いでしょう。

数字で見ていきましょう。
例えば、税引後利益500万円、減価償却費が100万円の企業の返済財源は600万円ですので、この会社は600万円までは返済金に耐えられることになります。
このため、年間返済額が600万円以下の借入金であれば、銀行は「返済には問題ない」と判断するのです。
これが基本的な返済財源という考え方です。
ただし、これは設備資金だけに当てはまる考え方で、運転資金には当てはまりません。
理由についてはそれぞれ詳しく解説して行きます。

 

運転資金の返済原資・返済財源

会社の運転資金がなぜ必要になるかといえば、売上に伴う経費の支払いが先にくるためです。
決まった売上に対しては大抵決まった経費が発生します。
つまり、予想される売上を作るために必要な資金が運転資金なのです。

運転資金は売上を生み出すもの

例えば、100万円の売上を作るために、仕入れ、人件費、家賃、光熱費などで60万円の経費が必要になるとします。
顧客へ商品やサービスを販売するためにはこの60万円がないと、商品の仕入れや製造や店舗や工場の運営ができないため、販売できません。
つまり、運転資金がないと売上を発生させることができないのです。

返済財源は将来の売上

運転資金があることによって、将来的な売上を確保することができます。
100万円の売上に対して、60万円の運転資金が必要になるのであれば、予定通りに売上を確保することができれば運転資金の60万円は100万円の売上入金時に返済できることになります。
繰り返しになりますが、運転資金は予定された経費を払うための資金です。
このため、予定さえた売上の入金から返済を行うものですので、「運転資金の返済財源は売上から」という考え方になるのです。

また、会社が赤字に転落した場合にも運転資金を借りることがあります。
例えば「1年後には経営が立て直る見込みで、それまでの毎月50万円の赤字を融資によって埋めたい」との理由で、50万円×12ヶ月=600万円の運転資金の借入を行ったとします。
このような場合には、融資金が枯渇する1年後に、予想通りに経営が立て直り、予想通りに売上が確保できるかどうかが審査の対象になります。

支払いと入金の時間的なズレである資金ギャップを埋めるための運転資金の借入も、赤字を補填するための運転資金の借入も将来の売上が返済財源としてみなされます。
ただし、赤字補填のための運転資金の審査の方が、将来的な売上の実現性が不透明であるため、審査が厳しくなるのです。


前述した、返済財源の計算式が運転資金の返済財源として正しくない理由は、「当期利益は経費を差し引いた金額」であるためです。
運転資金は経費を払うものです。
運転資金の対象となる経費(運転資金)を売上から控除した金額が当期利益です。
そのため、上記の返済原資の計算式から算出される返済原資が、例え借入金の年間返済額を下回っていても、運転資金は当期利益が赤字になっていなければ返済可能であると判断できるのです。

 

設備資金の返済原資・返済財源

設備資金とは、設備投資を行うための借入です。
設備投資を何のために行うのかといえば、規模拡大、老朽化した設備の入れ替えなどの理由です。
規模を拡大することで、収益の増加が見込めますし、老朽化した設備を入れ替えなければ収益は低下します。
また、運転資金のように、今日明日の売り上げを確保するために設備投資を行うわけではありません。
事業を長期的に拡大するために行うものです。
このため、設備資金の返済財源は長期的な収益という観点で審査を行います。

設備資金は利益を生み出すもの

設備資金は長期にわたって収益を生み出すものです。
むしろ、この計画(長期的に収益が見込めるという計画)のもとに投資が行われない場合には、銀行は審査を通過させません。
このため、設備投資によって、どのくらいの収益の増加が望めるのかということが審査で重要になり、設備資金の返済は収益から行うべきものとされています。

設備資金の返済財源は収益

設備資金の融資は、前述した返済財源の金額の範囲内に年間返済額が収まっていれば、例え設備投資に失敗したとしても返済ができなくなるリスクは低いといえます。
会社には、融資金額を返済できるだけのキャッシュフローがすでに存在するためです。
問題なのは、返済財源を返済額が上回っている場合です。
この場合には、①設備投資が期待通りに収益を得ることができるかどうか②設備効果がどのくらいかの2つのいずれかに関して銀行が合理性を見出せない限りは審査には通過できません。

長期にわたって返済していく設備資金ですので、投資計画に合理性があり、期待通りに収益を確保できると銀行が判断する必要があります。


設備効果とは、設備投資によってどの程度の経費を削減できるかということです。
例えば、毎月家賃50万円を払っている店舗を出て、自社物件を購入(毎月30万円返済)する場合には、売上自体は増えません。
しかし、この設備投資を行うことによって、毎月20万円(家賃50万円−返済金30万円)の経費を削減することができますので、削減した分だけ収益は増加します。

このように、設備資金の返済財源は売上ではなく、収益が返済財源となります。
長期借入金である設備資金の返済原資は以下の計算式で算出することができます。
設備資金返済原資=予想税引後利益+予想減価償却費
この「予想」の部分に関して銀行が合理性があると認めた場合には審査通過となります。

 

まとめ

運転資金とは売上を生み出すために必要不可欠な経費です。
そのため、売上が今季並みと予想できるのであれば、返済金が当期の経費の範囲内に収まっていれば「返済原資がある」とみなされます。
そのため、運転資金の審査では、営業利益が赤字でない限りは「返済原資がある」とみなされます。
一方、設備資金は、投資自体がうまくいくかどうかは不透明ですので、直近の営業キャッシュフローの範囲内が正味の返済原資で、営業キャッシュフローの範囲内に返済金が収まっている間は返済にはたとえ投資がうまく行かなくても返済原資はあるとみなされます。
返済原資を返済額がオーバーしている場合には、予測の収支から求められる予測のキャッシュフローが返済金の範囲内で、予測に合理性があると銀行が判断すれば融資を受けることができる可能性があります。
運転資金は経費を借りるための融資、設備資金は将来の収益を得るために投資を行う資金を借りるための融資ですので、それぞれ銀行が認める返済原資が異なりますので注意しましょう。

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