会社を回していくのには、売り上げがあってもなくてもお金がかかります。この、会社を回していくための資金を運転資金といいます。
運転資金が手元にない場合に銀行に融資を申込むことが多々ある訳ですが、運転資金の銀行審査はどのように行われ、金利や融資までのスピードはどのくらいなのでしょうか?
目次
運転資金の申込
運転資金を申し込むためには、まずは銀行と相談をしなければなりません。この際に、なぜ運転資金が必要になるのかを明確にしておく必要があります。
運転資金が必要な理由は概ね以下の4つです。
赤字でお金が必要な場合
売上の減少によって赤字となり、その分を埋めるために運転資金の借入を受けたいという人も少なくないのではないでしょうか?実際に運転資金の申込を行う会社の多くが赤字を理由としています。
リーマンショック時などの社会全体の突発的な不景気による赤字、単純に商売がうまくいっていない、放漫経営による赤字、取引先や親会社の事情による赤字など赤字の理由は様々です。
自社がどのような理由で赤字となっているのかをしっかりと説明できるようにしましょう。
資金ギャップを埋めるために運転資金が必要
製造業や建設業などの現金商売でない業種では仕入れや経費の支払いが先に来て、売上の入金は後になります。
売上金が入金となるまでの会社の運転資金を手元に持っておかなければ会社の経営は回っていかないことになります。
売上金の入金と支払いの時間的なズレを資金ギャップと呼びますが、資金ギャップを埋めるために運転資金が必要な場合には、資金ギャップはいくらなのかを説明できるようにしておきましょう。
資金ギャップの詳細は→ 支払サイトと入金サイトの資金ギャップで資金繰りが必要!債権債務回転期間
増加運転資金が必要なのか
会社の業務を拡大するために設備投資を行ったり、在庫仕入れを拡大する場合には、業務を拡大したことによって、人件費、光熱費、仕入代金が従前よりも多くかかることになります。
このように、業務拡大によって増加する運転資金を増加運転資金といいます。
増加運転資金を借りたい場合には、どのくらいの増加運転資金が必要なのか、業務拡大による売上金が入金となるまでどのくらいの時間が必要になるのかをしっかりと把握し、説明できるようにしましょう。
人為的な理由でお金が必要なのか
経営者が会社のお金を私的に使ってしまった、従業員がお金を持ち逃げしたなどの人為的な理由でお金が足りなくなることは実は珍しいことではありません。
このような場合には、運転資金を融資して資金繰りに問題ない企業であれば融資に応じてくれることもありますが、経営者が人間的に信頼できないような場合には融資を断られることもあります。
運転資金審査の5つのポイント
運転資金を借りるには審査が行われます。
審査の際に銀行や信用保証協会が着目するポイントには以下の5つがあります。
1,必要運転資金か否か
銀行は必要もないお金を基本的に融資しません。
例えば、不景気によって毎月20万円の運転資金が足りなくなるため、景気が回復するまでの1年間の運転資金20万円×12か月=240万円の運転資金が必要になる場合には、400万円・500万円もの余計な融資は行いません。
銀行から見て当該企業にとって不必要な融資は行なわないのです。
2,赤字の場合には回復の見込みがあるか
赤字によって運転資金が必要になる場合には、赤字が解消する見込みに合理性があるかどうかなども審査の対象となります。
赤字ということは、本業で利益が出ていないということですので、赤字を解消するためには、売上を拡大するか、経費を圧縮するのかどちらかの方法しかありません。
売上が回復・拡大する見込みを立てる場合には、取引先や社会全体の一過性の不況はいつ回復するのかについて合理的な理由が必要になります。
売上回復の見込みが立たない場合には、経費を具体的にどのように圧縮するのかについて銀行が納得しなければなりません。
いずれにせよ、赤字のままの状態で、回復の見込みが立たないのに融資を受けられるようなことはあり得ません。
3,債務超過の場合には解消される見込みがあるのか
債務超過というのは、会社の資本金がマイナスとなっており、資産よりも負債のほうが多い状態です。
資本金がプラスの場合には、たとえ赤字となっても赤字分は自己資本(自前のお金)で補填している状態であるといえます。
しかし、資本金がマイナスとなっている状態ということは、赤字分を借入金で賄っているだけの状態ですので、銀行融資が止まった時点でその会社の経営は成り立たなくなり倒産してしまいます。
銀行からしてみても、回復の見込みのない企業に融資を継続しても、回収不能のリスクが大きくなるだけですので、債務超過企業には債務超過がいつ解消されるのかという見込みが立たなければ融資を行ないません。
4,増加運転資金はどのくらいの期間必要なのか
倒産の事例で多いケースとして、急な業務拡大による倒産をあげることができます。
先ほど、業務拡大によって増加運転資金が必要になると説明しましたが、業務拡大による売上の効果が得られないと、いつまでたっても業務拡大による増加運転資金は回収できません。
そのため、業務拡大に合理性があるのか、増加運転資金や業務拡大のための借入はいつから業務拡大による売上増加によって支払い(回収)可能になるのかという計画の合理性も審査が行われます。
※急な業務拡大時に気をつけたいこと↓
黒字倒産の原因!キャッシュフロー赤字で資金繰り悪化 資金ショートを回避する方法
5,返済の資金繰りに耐えうるか
お金を借りるということには返済が伴います。
返済の資金繰りに耐えることができるのかも審査の際には重要です。
短期で見れば資金繰りはプラス
お金を借りた直後は会社に融資金が入ってくるため、資金繰りには楽になり、キャッシュフローもプラスになります。
100万円の融資を受けた場合の仕分けは以下のようになります。
(現金)100万円 | (借入金)100万円 |
この時点では、キャッシュフローは100万円のプラスです。
長期で見れば資金繰りはマイナス
しかし、借りた現金は経費の支払いに使用するため、以後は経費の支払いと返済に現金が必要になります。
運転資金は数か月分の運転資金の借入を行うため、借りたお金はいつか運転資金の支払いに消えてしまいます。消えた時点で、借入時のキャッシュフローのプラス100万円は喪失してしまいます。
その後は毎月の返済だけが残ってしまい、仕分けは以下のようになります。
(借入金)5万円 | (現金)5万円 |
借入金が枯渇した後は、毎月5万円ずつキャッシュフローはマイナスとなってしまいます。
つまり、借入金は返済分だけ資金繰りを悪化させるため、融資金が枯渇した後にキャッシュフローがプラスにならなければ返済の見込みが立たないことになります。
運転資金が枯渇した後は売上が上昇するとか回復するなどの見込みが立たない限りは融資には応じてもらえません。
※返済の元になる資金=返済財源(返済原資)について詳しく理解したい方は↓
運転資金と設備資金の返済財源 返済原資は営業キャッシュフロー?(運転資金と設備資金で異なる実態)
運転資金が融資されるまでの時間
事業の運転資金融資は個人向けカードローン審査のようなコンピューターによるスコアリング審査ではなく、すべて銀行や保証協会の担当者が人の目で判断し、さらに担当者→ 担当上司→ 支店長→ 本部などというように複数の人間が審査を行うため時間がかかります。
※銀行融資の審査稟議書と融資課長 支店長決済 審査部の本店決済の違い
さらに、銀行とのこれまでの付き合いの状況や、融資を受ける資金によっても時間は異なります。
初めて銀行との取引時は時間がかかる
全く取引がない銀行から初めて融資を受けようと思った場合には、銀行が自社のことを何も知らないため融資までに時間がかかります。まずは面談によって、銀行員が取引を行なってよい企業なのか取引すべきではない企業なのかを判断します。
「どのような業務を行っているのか」「業歴はどのくらいか」「取引先はどこか」「経営者の質に問題はないか」などといったことをヒアリングの中で判断し、基本的には会社まで足を運びます。
その後、決算書の分析を行なって、財務的に取引を行ってもよい企業かどうかを判断し、当該企業の格付けを決定します。
融資案件に入るのはその後ですので、初めて取引を行なう場合には融資までに1か月以上の時間がかかることを理解しておきましょう。
2回目以降は1~2週間
2回目以降は企業そのものに対する審査がないため、申込から案件の審査にダイレクトに入ってくれます。
早い場合には1週間程度、時間がかかる場合でも2週間程度で融資が実行されます。
制度資金融資は時間がかかることも
地方自治体の制度資金融資は金利が低いですが、時間がかかります。
制度資金は地方自治体、信用保証協会、銀行の3者が審査を行う融資です。
それぞれの審査に1週間程度の時間がかかると考え、3週間程は時間がかかってしまうと考えておいた方がよいでしょう。
※例外的に審査に時間のかからない融資スピードが早い制度融資 制度資金もあります。
運転資金の金利決定方法
運転資金の金利は個人向けカードローンや住宅ローンのように、金額や金利タイプであらかじめ決定しているわけではありません。
審査によって金利が異なる場合もあります。
プロパー融資は格付けありき
先ほど述べたように、企業そのものには銀行内部で格付けが決められています。
銀行には格付けによって適用金利や融資限度額というものが設定されており、格付けの高い企業ほど低金利・高額のお金を借りることができますが、格付けが低い企業は高金利・少額融資となってしまいます。
※会社の企業格付けを上げて銀行融資を獲得する方法!を銀行員が明かす
格付けの高い企業は1%を切る金利でお金を借りることができることがありますが、格付けの低い企業は5%程度の金利は覚悟しておいたほうがよいでしょう。
制度資金融資は制度の金利が適用
地方自治体の制度資金融資は、限度額、融資期間、金利などがあらかじめ決まっており、通常、格付けが平均的な企業においてはプロパー融資よりも低い金利が設定されています。
初めて銀行と取引を行うような小さな企業では、制度資金融資のほうが金利が低いため、ほとんどの企業が制度資金融資を銀行から紹介されることになります。
融資制度によって金利は異なるものの、1%半ば~2%半ばの金利が適用されると考えておきましょう。
日本政策金融公庫は審査によって区分される
日本政策金融公庫の金利は基本的には制度資金並みの低い金利となっています。
審査や制度によってどの金利が適用されるのかが決定しますが、商工会議所の経営相談員に経営指導を受けた企業だけに特別に金利が優遇される「マル経融資」などの優遇措置も用意されているため、詳しくは政策金融公庫や商工会議所などへ問い合わせを行なってみましょう。
※日本政策金融公庫で創業資金・事業資金を借りたい!<申込と融資の流れ>まとめ
短期運転資金か長期運転資金かの融資借入選択
運転資金には借入期間が1年以内の短期運転資金と、借入期間が1年超の長期運転資金があります。
短期運転資金は一括返済、長期運転資金は毎月分割返済というのが一般的です。
安易に「短期運転資金のほうが借入期間が短いから審査に通りやすい」と考えている人や、そのように説明しているサイトもありますが、実はそのようなことは全く関係ありません。
短期で融資するのには短期で融資するための合理性があり、長期で融資するのは分割返済するための合理性があるのです。
自分で希望して選択するものではない
「金利が低いから短期がよい」などの理由で長期か短期などを自ら希望して借りることはできません。
銀行からしてみれば、一括返済の短期資金を融資しても、期日になって一括返済されなければ非常に困ります。
また、一括で返済できる企業に長期の運転資金を貸し付けたとしても、一括返済のための資金を不要なことに使われてしまう懸念もあります。
短期・長期の使い分けはその融資の返済方法に合理性があるため、長期か短期かを適用させるのです。
どのような使途で必要なのかを銀行と話し合ったうえで、銀行が最適な融資方法を紹介してくれます。自分から申込時に「短期がよい」「長期がよい」と合理性のない希望はしないほうが無難です。
また、短期のほうが審査に通りやすいなどのことは一切ありませんので注意してください。
建設業などは短期
建設業は工事代金が工事完成後に一括で入金となりますが、工事完成前は人件費、重機の費用などの様々な経費が必要になります。
この場合には、工事受注から工事完成までの短期間を短期資金で融資して、工事完了後に一括返済を行うことが一般的です。
※工事引当資金融資とは?工事延長や目的外流用の銀行対応と紐付き融資とは?
不動産開発業者なども土地の購入から売却に至るまでの短期間融資を受けることが一般的です。
このように、仕事を短期間で完了でき、売上金の入金は一括でドカッと入ってくる、仕事に継続性がない業界には短期資金が向いています。
製造業などは長期
毎月毎月の決まった経費や仕入れ代金を埋めるための資金は長期資金で対応するのが一般的です。
このような業種は一括で返済を迫った場合には、その後の運転資金が枯渇してしまいますし、そもそも一括返済のお金が無い場合が多いためです。
毎月10万円の利益が出る企業に、運転資金200万円の融資を行なって1年後に一括返済を迫っても1年後には手元に120万円しかお金がないため、一括返済は不可能です。
このように継続して毎月決まった売上や利益を計上している会社には長期資金で融資を行うことが一般的です。
なお、このように継続性のある企業であっても、資金ギャップ(下記※)を埋めるための資金であれば、短期で融資するのが理想とされています。
3か月分の資金ギャップ100万円を3か月の短期資金で融資して売上債権が入金となった段階で返済を行い、次の資金ギャップの分をまた短期で借りる→返済ということを繰り返すと次第に利益分によって内部留保がたまるため、運転資金の融資は必要なくなるというのが理想のサイクルです。
しかし実際にはそのように毎月毎月計画通りに売上と利益を上げることができない企業が多いため、資金ギャップを埋めるためでも長期で融資を行うのが一般的になっています。
※支払サイトと入金サイトの資金ギャップで資金繰り!買入債務回転期間と売上債権回転期間
運転資金の必要書類
運転資金の融資に必要になる書類は概ね以下のようになっていますが、審査の過程で他の書類の提出も銀行から要求されることもあります。
- 決算書(確定申告書)過去3年分
- 会社の登記簿謄本(法人の場合のみ)
- 経営者(個人事業主本人)の住民票
- 会社と経営者(個人事業主本人)の印鑑証明書
- 法人(個人事業主本人)の納税証明書
このほか、資金繰り表や売上・仕入れ先との取引状況がわかる書類や、売上金入金の通帳などの提出を要求されることもあります。
日銭が入る商売は創業時以外は運転資金の借入が難しい
毎日現金での売上がある飲食業や美容院などのサービス業は、実は運転資金の融資を受けることが難しい業種です。
運転資金とは、先ほど運転資金の計算式でも述べたように、在庫や売掛金などの売上債権が現金化するまでの資金ギャップを埋めるための資金です。
在庫が即現金化するような商売では、資金ギャップが発生しないため、経営が軌道に乗るまでの創業後の1年~2年程度以降は融資の必要性がありません。
日銭が入る商売で運転資金が必要になるということは、経費の支払いに売上が追い付いていないということですので、営業赤字の状態です。
そのような商売は、無理にお金を借りて継続するよりも、営業を止めたほうがよいという判断になります。
※飲食店経営を続ける難しさ!資金繰りに銀行融資で運転資金借入すると…
審査の実態
運転資金の審査には上記のような合理的な考え方によって審査が行われるのですが、実際の銀行の現場がこのような考え方で融資を行なっているのかといえば必ずしもそうではありません。
ただ、融資が出るのが難しいケースだけは理解しているため、このケースに該当する申込はやめておいたほうがよいかもしれません。
基本的には保証協会ありき
初めて取引を行う企業に対して保証協会の保証を付けずに融資を行うということはほとんどありません。最初に銀行が運転資金の融資をする時には、保証協会の保証を付けます。
保証を付けずに融資を行うと、もしも返済がされない場合には銀行がすべてリスクを負わなければならないため、銀行と取引実績を積み、銀行から信用を得た企業でないと、プロパー融資は行なわれません。
※保証協会の保証付き銀行融資(マル保)と銀行プロパー融資の違い比較!審査が甘いのは?
このため、銀行にとって融資を行うかどうかは、信用保証協会の保証が付くか否かに左右されてしまいます。銀行は案件を取り上げてくるだけで、保証協会へ保証依頼を上げて、保証が下りたら融資を実行するのが実態です。
そのため、保証協会の機嫌を取るために銀行は接待を行なったりしていますし、保証協会が保証に後ろ向きの場合には「何とか保証をお願いします」と頼み込むこともしばしばです。
銀行員は審査ノウハウをわかっていない人が多い
実質的に審査を行なっているのは保証協会ですので、若手の銀行員は必要運転資金がいくらか、資金繰りの予想はどうなるのかなどの審査を行なうことができない人が少なくありません。
保証協会ありきの審査の場合には、銀行員に審査能力が育たないことが苦慮されているため、金融庁は銀行がプロパー融資を多く取り上げるよう喚起するようになりました。
必要運転資金以上を借りることができることもある
必要運転資金以上の申込を行っても(必要運転資金が100万円なのに300万円の申込を行うなどの場合)、実際には銀行はノルマありきで案件の取り上げを行なうため、必要以上の金額の申込でも受け付け自体は行なってくれます。
銀行には毎月事業資金融資○○百万円を実行するなどというノルマがあるためです。
その後、信用保証協会へ保証依頼を上げた際に「こんなに多くの運転資金が必要なわけがないでしょう」と減額回答がある場合もあります。
そのような際は、銀行が「何とかお願いします」と頼み込むことで、300万円は無理でも200万円までなら保証しますなどと回答があることがあります。
つまり、自分で本当に必要な資金はいくらなのかを把握しておかなければ、必要以上のお金を借りさせられる可能性があるということです。
売上高以上の融資は難しい
いくらノルマのために必要運転資金以上の融資に応じてくれる可能性があるといっても、売上高以上の運転資金の融資を受けることは不可能であると理解しておきましょう。
3期連続営業赤字・債務超過の企業は融資を受けるのが難しい
赤字企業には今後黒字に転ずる見込みがあるからこそ融資を行なうのです。
3期連続で営業赤字となっている企業は「営業をつづけても本業で儲かる見込みのない企業」と判断されます。また、債務超過先の企業は銀行からの融資がないと事業を継続することができない企業です。
赤字が続いていても資本金がプラスであれば、その企業は営業を継続できる体力があるとみなされ、融資を受けられることがあります。
債務超過であっても黒字を出していれば、今後は黒字によって債務超過が解消される見込みがあり、融資を受けられる可能性があります。
しかし、3期連続の営業赤字で債務超過の企業は、本業で儲かる見込みがない上に、銀行の融資によって存続できているだけの会社であるため融資を受けることはほぼ不可能です。
1年間に複数回の借入は難しい
長期運転資金を1年間の間に何度も借りることは不可能です。
長期運転資金とは、今後数か月の資金繰りの赤字や資金ギャップを埋めるための資金ですので、その資金が数か月後に枯渇したからと言って、再び融資を受けることは不可能です。
資金繰りに計画性がないか、会社の運転以外のことにお金を使ってしまったと思われるため、最後の融資から1年以内に親会社の倒産やリーマンショック級の不景気などのよほどの突発的な事情によって売上が大激減するなどの事情がないと、長期運転資金の連続融資は難しくなります。
基本的には最後の融資から1年以上は経過していないと長期運転資金を借りるのは難しいと考えておきましょう。
審査を有利に進めるポイント
運転資金の融資の審査を有利に進めるには、銀行員との最初の面談が非常に重要になります。
先に述べたように、事業資金の審査は人間が進めるため、面談時に「この人は会社の経営をよく理解している」「将来性のある経営者だ」と銀行員が判断すれば、銀行員も審査に対して積極的になってくれます。
審査の実態は、銀行員が本部や信用保証協会に対して頭を下げて融資や保証を引き出すというものですので、担当者がどれだけ熱意を持って「この企業を応援したい」と考えてくれるかどうか(稟議書にどう書いてくれるかどうか)が、かなり重要なのです。
予定の資金繰り表を作成しよう
先ほど述べたように、運転資金の融資を受けると短期的には資金繰りは楽になりますが、その後は返済金で資金繰りが苦しくなります。
そのため、融資実行後の資金繰りがどうなるのかの予定の資金繰り表を作成し、融資実行後にキャッシュフローがプラスになるということを示せるようにしましょう。
※融資を引き出せる資金繰り表の作り方!苦しい資金繰りの改善に銀行視点で良いテンプレート
将来の見込みはプラスに根拠づけ
予定の資金繰り表や銀行員との面談の中で、今後の売上の動向についてはプラスになるように説明しましょう。
また、売上上昇の原因の根拠もしっかりと付けられるようにしましょう。
なんとなく、売上が上昇する見込みというような根拠のない説明をしても意味がありません。
いくら借りかられるのかは厳禁
銀行窓口に「いくらなら借りられる?」と尋ねてくる人がいますが、このような態度は厳禁です。
基本的に企業に対する融資は、融資の必要性があるため融資を行なうのであって、この会社ならいくらまでの融資ができるという理由で余分な融資を行なうことはしません。
(実態としてはそのような面もありますが)
そのため「○○の理由でいくら必要」という切り口から融資の申込を行いましょう。
「この決算書だとお宅はいくら貸してくれる?」という態度は最初から信用を失います。
担保があっても借りられるとは限らない
また、「この不動産を担保に入れるからお金を貸してくれ」と言ってくる人もいますが、担保があるからと言って融資を受けることができるわけではありません。
運転資金の融資金は、その会社の運転を正常に回し企業活動が維持発展していくための資金ですので、最悪の場合、担保があるから回収可能という目線で融資を行なうことはしません。
そのため、基本的にはいくら資産価値の高い不動産があるからといって、赤字・債務超過のような会社がお金を簡単に借りられるわけではありません。
まとめ
運転資金とは、会社の運転・経営を正常に回していくための資金です。
会社の運転資金が足りずに融資を受ける理由は様々ですが、「なぜ」「いくら」必要で、返済計画はどうするのか、今後の会社の経営はどのようになるのかを銀行に対して示す必要があります。
銀行にせよ、保証協会にせよ、それらの説明に合理性が生まれる場合のみ融資に応じてくれます。
銀行にはノルマがあるため、基本とは乖離している部分もあるものの、原則的には必要もないお金、会社の将来のためにならないお金は融資しませんので、自社の現状と将来像をしっかりと示せるように申込を行いましょう。