「会社のお金が足りない」そんな時には、多くの人が銀行の融資を考えるのではないでしょうか?
しかし、「急ぎでお金が必要」「銀行の融資枠は一杯」という場合には、銀行には頼れません。
銀行の事業資金審査は厳しいですし、どんなに早くても融資までには1週間は必要になってしまうためです。
そんな時に頼りになるのがビジネスローンです。
ビジネスローンには「審査が早い」「審査が銀行融資よりも甘い」という2つの特徴があります。
なぜ、ビジネスローンは銀行の事業資金よりも審査が甘く、スピード審査を実現することができるのでしょうか?
この記事では、ビジネスローンの審査について考えていきたいと思います。
目次
銀行のビジネスローン審査が一般的な銀行融資(保証付き・プロパー)の審査より甘い理由
銀行には、事業者向け融資として、保証会社がついて審査が早いビジネスローン(事業ローン)と、信用保証協会の保証付融資とプロパー融資の3つの資金があります。
このうち、ビジネスローンは保証協会付融資やプロパー融資と比較して審査が最も甘くなっています。
筆者も「保証協会の審査に通過できない場合はビジネスローンへ審査を上げる」ということを何度もしたことがあり、実際に、保証協会の審査に通過することができなかった事業者がビジネスローンの審査には通過することができたことは何度でもあります。
間違いなく、ビジネスローンの方が保証協会付融資やプロパー融資よりも審査は甘いというのが筆者の実体験です。
なぜ、ビジネスローンの審査は甘いのでしょうか?
金利が高い 事業資金の金利相場比較
3種類ある事業資金の金利はおおよそ以下の通りです。
ビジネスローン:10%〜15%程度
保証協会付融資:1%後半〜4%程度
プロパー融資:1%〜3%程度
ご覧の通り、ビジネスローンの金利設定は他の事業資金と比較してダントツに高くなっています。
金利はリスクに応じて設定されますので、金利が最も高いビジネスローンの方が多くのリスクをとることができる(銀行側が)ので審査は甘くなっています。
ビジネスローンはスコアリング審査しか行わない
ビジネスローンの審査はスコアリング審査です。
スコアリングとは、決算書や確定申告書の内容を点数化して、その事業者のリスクを測定し、基準点以上となった場合のみ審査通過とする審査です。
ビジネスローンでは、スコアリング審査を保証会社が行い、保証会社の審査に通過できた場合のみ、審査に通過することができる審査です。
保証会社の審査に通過した融資案件は、その会社が反社会的勢力に該当するなどのコンプライアンス上の問題がない限りはほぼ確実に融資を行います。
この話を聞いて、どこかで聞いたことがあると思った人は多いのではないでしょうか?
そうです。ビジネスローンのスキームは、個人向けの銀行カードローンのスキームと全く同じ、保証会社ありきの融資です。
銀行は詳細な審査の内容についてほとんど関与せず、保証会社の審査に通過できた案件を事務的に処理するのが、ビジネスローンにおける審査の特徴です。
スコアリング審査の特徴として「審査が早い」点を挙げることができます。
スコアリング審査は、審査システムに決算内容を入力するだけですので、審査結果はすぐに判明します。
そのため、ビジネスローンは銀行の事業者向け融資の中で最も融資のスピードが早く、早い銀行の中には最短即日融資に対応している場合もあるのです。
将来性はあまり審査しない
事業資金の審査は本来、「資金が回収できるかどうか」という視点の他に、「この融資をしたことによって会社の資金繰りは将来的にどうなるか」「この資金は会社の将来のために本当に必要か」などという会社の将来像についても審査を行うものです。
保証協会付の融資では、保証協会の審査担当者がそのように審査をし、銀行も信用保証協会の担当者へ「融資の合理性」や「資金の必要性」や会社の将来性について説明できなければなりません。
プロパー融資では、このような審査を全て銀行内部で行います。
しかし、ビジネスローンでは、このようなことは審査しません。
数字から見える部分だけを審査するため、人間の手で行う審査項目がほとんどないのです。
ビジネスローンの審査は銀行にとって「保証会社の保証が付くか付かないか」だけで、面倒な将来性を審査する過程がないので、審査がとても早いのです。
法人向けのビジネスローンはなくなりつつある
スコアリングでは、個人事業主と法人で審査項目が異なるということをご存知でしょうか?
法人のスコアリングの審査項目は決算書の内容です。
一方、個人事業主の審査項目は、確定申告書の内容と個人事業主の信用情報です。
一時期問題になった、新銀行東京が経営不振になった原因を覚えているでしょうか?
新銀行東京の審査は、経営者が借りてきた決算書をスコアリングシステムに入力していただけで、実際にはその決算書は粉飾だらけだったため、融資金の多くが不良債権化して、大赤字となってしまったのです。
つまり、決算書だけを当てにしたスコアリング審査は、信憑性がかなり怪しく、実際には返済能力がない会社に対して融資を行ってしまう可能性があるのです。
実際に、銀行の法人向けビジネスローンでも多くの貸倒れが発生しています。
最終的なリスクを負う保証会社は、リスクが大きすぎるという理由で、法人向けのビジネスローンから相次いで撤退しています。
銀行のホームページに掲載されている、ビジネスローンの多くが個人事業主向けだけとなっている理由は、決算書は粉飾決算の恐れがあるため、スコアリング審査に向いていないためです。
「個人事業主も確定申告で粉飾をしている可能性がある」とお思いかもしれません。
しかし、個人事業主の場合には書き換えが不可能な信用情報にも照会を行うことができるため、スコアリング審査でもリスク管理ができるのです。
スピード審査を実現するスコアリング審査は、法人には適していないため、法人が銀行からビジネスローンを借りることは、選択肢自体が非常に少ないと考えた方がよいでしょう。
銀行のビジネスローンとノンバンクや消費者金融のビジネスローンの審査比較
銀行の他にも消費者金融などのノンバンクもビジネスローンの取り扱いがあります。
むしろ、ビジネスローンはノンバンクの得意分野であると言えるでしょう。
銀行とノンバンクのビジネスローンにはどのような違いがあるのでしょうか?
ノンバンクは法人向けも行う
銀行のビジネスローンは個人事業主に対してしか行わないことが多いと説明しましたが、ノンバンクであれば法人でもビジネスローンを借りることが可能です。
後述しますが、金利が高いため、リスクの高い法人へのスコアリング審査を行っても採算が合う設計になっているのです。
金利は銀行の方が低い
ノンバンクのビジネルローンの金利は概ね以下の通りです。
100万円未満:18.0%
100万円以上:15.0%
つまり、利息制限法の上限金利ギリギリの金利設定となっています。
金利は間違いなく、銀行の方が低くなっています。
このため、銀行の方が審査が厳しいと言えば確かにそうなのですが、銀行の方が審査が厳しい理由はこれだけではありません。
銀行には保証会社が存在する
銀行のビジネスローンは保証会社がついています。
ここからは銀行カードローンと消費者金融カードローンの審査の違いと同じです。
銀行のビジネスローンの保証をして、保証会社に入ってくる保証料収入は、金利の半分が限度と言われています。
つまり、金利14%のビジネスローンであれば、保証会社に入る保証料は7%です。
ビジネスローンの銀行への返済が滞った場合に、保証会社は債務者に代わって返済する義務を負っていますので、保証会社は受け取れる保証料収入7%の範囲内で審査を行わなければなりません。
簡単に言えば、貸倒の可能性が7%以下の事業者までしか保証をすることができないのです。
一方、ノンバンクのビジネスローンは保証会社などついていません。
このため、金利18%のビジネスローンであれば、貸倒の可能性が18%の事業者まで融資をすることができます。
銀行のリスク許容限度が7%であるのに対して、ノンバンクは18%までリスクを許容することができるので、単純計算でノンバンクの方が銀行の約2.6倍のリスクを背負うことができるのです。
銀行のビジネスローンよりもノンバンクのビジネスローンの審査が甘い理由は単純な金利差以上に、保証会社の存在によって許容できるリスクが圧倒的にノンバンクの方が大きいためです。
銀行が法人へのビジネスローン融資をしない理由は「保証会社が7%程度の保証料収入では、粉飾決算のリスクまでは背負うことができないから」です。
スピードはノンバンクが早い
先ほど説明したように、銀行のビジネスローンは保証会社の仮審査を行い、仮審査に通過した後は、銀行の本審査が行われます。
銀行も形だけとは言え、稟議を行いますので、本審査でもそれなりの時間がかかります。
一方、ノンバンクのビジネスローンはノンバンク1社で稟議が完結するため、融資スピードはノンバンクの方が早くなります。
最短即日融資に対応しているノンバンクも数多く存在します。
銀行も最短即日融資に対応しているビジネスローンも存在しますが、ほとんどの場合で3営業日程度は必要になってしまいます。
審査はノンバンクと消費者金融の方が緩い
ここまで説明したように、審査は確実にノンバンクの方が緩くなっています。
理由は以下の通りです。
①スコアリングの基準点が低い
得られるリターンが大きいノンバンクのビジネスローンの方がスコアリングの基準点が低くなっています。
つまり、スコアリングで銀行審査に通過できるほどの高得点を出さなくてもノンバンクであれば借りることができる可能性が高いということです。
②粉飾も加味したリスク判定となっている
先ほどから説明しているように、法人の決算書では粉飾決算に近いことが行われていることが珍しくありません。
しかし、最大で18%ものリターンを得ることができるノンバンクのビジネスローンであれば、例え融資先に粉飾決算を行っている業者が存在したとしても、採算が合う場合があるのです。
一方、保証会社が付かなければビジネスローンのようなスピード融資をすることができない銀行は、少ない保証料の中では粉飾決算のリスクをカバーすることができないため、法人へのビジネスローンを扱わないのです。
まとめ
ビジネスローンのまとめです。
- 銀行の事業者向け融資の中ではビジネスローンが最も審査が甘く融資までに時間がかからない
- 銀行のビジネスローンで法人向け融資の取り扱いは少ない
- ノンバンクのビジネスローンは法人にも個人事業主にも融資を行う
- 金利は銀行ビジネスローンの方が低い
- 審査はノンバンクの方が甘い
- 融資スピードはノンバンクの方が早い
個人事業主であれば、先に金利の低い銀行へ申し込みをして、審査に落ちたらノンバンクを利用するようにしましょう。
法人であれば、ほとんどのケースでノンバンク一択になるでしょう。
面倒な審査の手間がなく、スピーディーに借りることができるビジネスローンですが、審査の基準は「返済できるかどうか」だけになってしまい、その事業者の将来のことまで心配してくれるわけではありません。
このため、できれば銀行の保証協会付融資かプロパー融資を利用し、ビジネスローンは最後の手段として取っておくようにしましょう。
手軽さを求めて安易にビジネスローンへ手を出すことはおすすめできません。