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時間のかからない制度資金
制度資金が一般的に時間がかかるといわれているのには以下の理由があります。
①経営者が地方自治体の窓口に行かなければならない
②自治体の役人さんの書類のチェックが細かく時間がかかる
③制度によっては、税理士に前年同月比で売り上げが減少しているかなどの証明書をもらわなければならない
③用意する書類が銀行・信用保証協会・地方自治体の3者に分かれ、書類の用意や契約書の用意に時間がかかる
④融資金額によっては銀行の審査に時間がかかる
どのような制度資金であっても、信用保証協会の審査内容は変わりません。
「この制度資金は保証審査を厳しくしよう」などということは信用保証協会はしていません。
信用保証協会にとって、制度資金と一般の保証資金の違いは、保証料を自治体からもらうか、企業からもらうかの違いしかありませんので、審査の基準は「保証できる企業か否か」だけです。
ですので、どのような制度資金であっても信用保証協会の審査は早くて1日、遅い場合には1週間程度の時間がかかります。
しかし、制度資金によっては、①~④までの審査の時間を圧倒的に短縮できる資金があります。
・地方自治体と経営者の折衝がない(経営者が役所窓口に行く必要がない)
・地方自治体の審査は融資実行後に追認して行われる(事前に自治体の書類チェックがない)
この2つの特徴を持つ制度資金は実質的に地方自治体の審査をカットできます。
また、筆者が勤務していた地方銀行がある県のこのタイプの制度資金は、融資金額5000万円くらいまでの小口資金(中小企業向けには500万円くらいまでしか通常は利用しない)で、基本的には中小企業であればどこでも借りることができる資金でした。
したがって、前年同月比の売上を証明する書類なども一切不要で、要は中小企業であればよいというものです。
制度資金の申込書も銀行の申込書と一緒になっているため、一部だけもらって後は、融資実行後に銀行にコピーを保管し、原本は自治体へ郵送という手続きです。
信用保証協会の保証さえ得られれば、小口融資ですので支店長の決済権限内となります。
したがって、審査にかかる時間は朝稟議を上げればその日の夕方には審査完了です。
そのため、信用保証協会の審査に1日、銀行審査に1日、契約手続きに1日で、最短4日くらいで融資をすることができます。
もちろん、融資をしても業況に問題がない企業で、信用保証協会の審査に時間がかからないということが大前提です。
このような自治体審査をカットできる資金でも、信用保証協会の審査に時間がかかる場合には1週間以上の時間がかかってしまいます。
資金の内容
県の「中小企業振興資金(一般枠)」という資金です。
以下長野県のHPで確認していただければわかるかと思いますが、必要な書類は申込書と、中小企業振興資金運転資金確認票という書類2つだけです。
長野県中小企業融資制度(中小企業振興資金)
また、以下の概要をご覧になっていただければわかるかと思いますが、申し込み条件は「経営の安定又は合理化のために資金を必要とする方」だけで、要するにどこの企業でも融資対象なのです。
平成29年度 長野県中小企業融資制度のご案内
金利は2.1%と制度資金のなかでは比較的高め、保証料率は2.2%で税金からの補助は全くありません。
また、運転資金の融資期間は5年と、最近は長めの期間が設定できる制度資金の中では短く設定されています。
要するに、融資手続きに手間がかからない代わりに、何も気が利いていない制度資金なのです。
私は、以前、コンビニのオーナーが税金を滞納しており、月末までに納税しないと「資産の差し押さえになってしまう」と焦って相談を受けたことがありました。
ほとんどの制度資金では、納税証明書が必要になるのですが、以下でも分かるように、この資金だけは納税証明を提出する必要がないのです。
http://www.pref.nagano.lg.jp/keieishien/sangyo/shokogyo/kinyu/chusyo-yushi/tetsuzuki.html#shorui
そのため、県中小企業振興資金を利用して、相談から4日程度で融資を行いました。
私の取り扱いはイレギュラーですが、同僚の中には、月末1週間前くらいに急に月末の資金繰りの相談を受け、中小企業振興資金を利用するというケースがかなりありました。
また、銀行は企業に対して「お金を借りてくれ」という営業を行います。
社長の中には「面倒でないならいいよ」と言って金利等には全くうるさくない人も少なくありません。
そのようなケースにおいては、社長の負担をほとんどかけない「中小企業振興資金」を利用して、簡単に融資をしていました。