目次
緊急資金繰り→ 資金ショート時の資金調達術 急場をしのぐ方法
手形割引
手形の割引とは、自社がもっている受取手形を担保として、利息を差し引いた手形金額の融資を受けるという方法で、日本では以前からポピュラーな方法です。
3か月先の手形であれば、3か月先まで入金がないため、3か月分の運転資金を手元に持っていなければなりません。
しかし、手形を割り引けば、手形の支払期日前であっても現金化することができるため、会社の資金繰りはかなり安定することになります。
詳細へ→ 手形割引とは? 分かりやすく詳しく解説(銀行貸付の4種類比較も)
債権担保融資 ABL
売掛金などの売上債権などを担保として融資を受ける方法が最近銀行で拡大しています。債権担保融資(ABL)という方法です。
取引先からの入金があるまで、その分の運転資金を手元に持っていないと会社を回していくことができませんが、この方法であれば、売掛金を担保としてお金を借りることができるため、売掛金入金までの資金ギャップを埋めることが可能になります。
担保にもよりますが、売掛金の50%程度までの融資に応じてもらえることが一般的です。
詳細へ→
ファクタリング
最近流行している方法がファクタリングです。ファクタリングとは、ABLが売掛金などの売上債権を担保としてお金を借りる方法であるのに対して、売上債権を売却する方法です。
手数料がかなり高く、売上債権金額の20%程度の手数料が発生することが一般的です。
民間企業がファクタリングを行っていることが多く、早いところでは1日~3日程度で現金化してくれる企業も存在します。
ヨーロッパではABLや手形割引よりもファクタリングのほうがメジャーな方法です。
詳細へ→ ファクタリングとは?売掛金買取の仕組みと2社間3社間の契約の違いを比較
ノンバンクの活用
民間の消費者金融やカード会社などから事業資金を借りる方法です。
銀行からの融資は早くて1週間程度の時間がかかります。このため、急に取引先から入金が遅れるという連絡が入った時には、銀行融資では時間的に間に合わないことがあります。
ノンバンクの融資は早いところでは最短即日、その他でも最短3営業日程度で融資に応じてくれるため、急にお金が枯渇して資金ショートしてしまう危機に対処するのには非常に適しています。
また、銀行の融資金返済を延滞中などの理由で、銀行から融資を受けることができない企業であっても、ノンバンクであれば融資に応じてくれることもあります。
ノンバンクの金利は法定金利ギリギリの15~18%程度に設定されていることも珍しくなりため、銀行融資よりも審査が甘いという点も特徴です。
①融資までのスピードが速い②銀行よりも審査が甘いという2つの特徴があるため、ノンバンクの融資は金利が高いですが、急場の資金繰り改善には適した方法です。
詳細へ→ 銀行融資とノンバンク<急ぎ至急>事業ローン融資スピード比較
資金ショートによる倒産ケース
銀行借入の返済遅延
現金が足りずに、銀行への返済が遅れると、銀行からの信用を失うことになります。
銀行からの信用を失ってしまうと、新規で融資を受けることが難しくなり、その後、融資の必要性にかられた際に融資を受けることができなくなり、倒産に追い込まれる可能性があります。
また、返済を長期間行わない場合には、「貸したお金を全額一括で返済せよ」という期限の利益喪失となってしまい、返済ができない場合には、裁判所に強制執行手続きの申し立てが行われ、資産の差し押さえなどとなってしまうケースもあります。
不渡り
自社が振り出した手形や小切手は当座預金に現金がない場合には決済できずに不渡りとなってしまいます。
小切手や手形が不渡りとなると、銀行取引停止処分となり、銀行と取引ができない会社はほぼ間違いなく実質的には倒産となってしまいます。
取引先や従業員の信用を失う
現金が足りない企業は、取引先への支払いや従業員への給料支払いを先延ばしにすることも珍しくありません。
これによって取引先が「取引をやめる」とか従業員が「退職する」などということから、業務の継続が困難になり、倒産となってしまうことも珍しくない事例です。
資金繰りを悪化させないために
資金ショートの前段階として、資金繰りを悪化させないための対処法として以下の4つの方法を考えることができます。
支払サイトを長く、入金サイクルを短くする
自社が他社に支払う買入債務の支払いサイトを長くすれば、その分だけ資金繰りは楽になります。
現金仕入れのものを翌月末支払いにすれば、その分だけ手元に現金がなくても会社は回っていくことになります。
また、売上の入金サイクルを短くすることも重要です。3か月先の入金を1か月先の入金へと変更できれば、2か月分の運転資金を確保しておく必要がなくなります。
すべて現金売上にできれば手元に運転資金を持っておく必要がなくなります。
このような交渉は取引先の同意ありきの話にはなりますが、中には交渉に応じてくれる会社もあります。
余分な在庫を持たない
先ほどの必要運転資金の計算式から分かるように、在庫の数が多ければ多いほど必要運転資金も大きくなってしまいます。
このため、不要な在庫は持たないということも重要です。
投資効果を計算したうえで投資を行う
設備投資や在庫の一括仕入れなどは、後から現金化できる可能性はあるものの、直近では資金繰りを圧迫することになります。
特に、主に借入によって行う設備投資は、投資による売上増加とその売上の入金効果がどの程度の期間で発生するのかをよく見極めたうえで投資を行いましょう。
銀行から設備資金の借入を行う場合には、元金の返済を最長1年程度据え置いてくれる「元金据置」も利用することができるため、設備投資の投資効果がどの程度で現れるのかをよくよく考慮したうえで投資を行いましょう。
拙速な設備投資を行った企業が資金ショートを起こして倒産し、その後他社が買収し、投資した設備をフル活用して収益を上げているなどという事例は決して珍しくありません。
投資効果がどの程度の期間を置いて現れるのかの計算は非常に重要です。
支払手形はリスクが高い
先ほど述べたように、支払いサイトを伸ばすことは資金繰りを改善するうえで有効な手段です。
支払いサイトを伸ばす手段として、数か月先の支払手形を発行するという方法がありますが、この方法はリスクも高く諸刃の剣です。
もしも、手形期日に現金が足りなくなってしまった場合には当該手形は不渡りとなり、銀行取引停止処分となり、一発で実質的な倒産となってしまうためです。
このため、支払手形を発行するのであれば、銀行から運転資金を借りて、少しずつ返済していくという方法のほうが安全であるといえるかもしれません。
運転資金の管理を行うためには
ここまで述べたように、黒字倒産とは利益は出ているが運転資金が足りずに資金ショートを起こしてしまうことを示します。
運転資金の管理は売上や仕入れの管理と同様に非常に重要なのです。
黒字倒産を防ぐために運転資金を管理するためには、どのようなことが重要なのでしょうか?
運転資金の計算方法
まずは、会社に必要な運転資金はどの程度なのかということを知る必要があります。
必要運転資金は以下の計算式で算出できます。
「売上債権 + 在庫 – 買入債務」売上債権とは売掛金や受取手形を示します。
また、買入債務とは買掛金や支払手形を示します。
つまり、売上債権と在庫の金額から買入債務を差し引いた金額を売上金や在庫が現金化するまで、手元に持っていなければならないということになります。
この金額を手元に持っておけば、売上債権や在庫が現金化するまでの時間、つまり資金ギャップを埋めることができるためです。
要するに、将来現金化する予定のお金はいくらかを算出するのが上記の式で、将来現金化する予定のお金を現在手元に持っておけば会社は正常に運転していくことができるという点です。
まずは、自社の必要運転資金を上記の式で把握しておきましょう。
資金繰り表を作成する!テンプレートをダウンロード
資金繰り表とは、売上債権の入金、買入債務の支払いなどといった、現金の動きを把握しておくための重要なものです。
下記の表は日本政策金融公庫の資金繰り表のフォーマットです。
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html
経営計画策定に役立つ各種資料について
このページから、経営計画策定に役立つ各種資料等をダウンロードすることができます。
経営計画策定に役立つ各種資料等
資料名 | 内容 | ダウンロード |
1 資金繰り表 | 資金繰り計画を策定する場合に、ご利用いただくと便利です。 | 簡易版excelファイル |
資金繰り計画を策定する場合に、ご利用いただくと便利です。 | 詳細版excelファイル | |
2 資金繰り表 | (作成手順及び記載例) 資金繰り表の作成手順及び記載例です。 | 簡易版excelファイル |
(作成手順及び記載例) 資金繰り表の作成手順及び記載例です。 | 詳細版excelファイル | |
3 経営改善計画書 | 経営改善計画を策定する場合に、記入例を参考に、ご利用いただくと便利です。 | 簡易版excelファイル |
経営改善計画を策定する場合に、記入例を参考に、ご利用いただくと便利です。 | 詳細版excelファイル | |
4 経営改善計画書記入例 | 経営改善計画書の記入例です。 | 簡易版PDFファイル |
経営改善計画書の記入例です。 | 詳細版PDFファイル |
過去の実績を記録していくことも重要ですが、会社の資金繰りを管理するためには、将来発生する事象を今のうちからすべて記録しておき、資金繰りの予想を立てておくことが非常に重要です。
資金繰り表は「実績」を記録したものと、「予想」を立てるものの2つ作成しておいた方がよいでしょう。
例えば支出の欄で言えば「給料」「光熱費や家賃などのその他の経費」などは毎月大きくは変わらないため、今のうちから記録しておくことができます。
さらに、「支払い予定の納税額」なども今から記録することができる数字です。
また、借入金によって設備投資を行ったのであれば、翌月から発生する「返済金」は今から記録しておくことができます。
このように、事前に分かっている現金の支払いを今からすべて記録しておきましょう。
その後、毎月確実に入ってくる現金売上、期日となる手形の入金などを記録し、「会社の資金繰りが赤字にならないために、いくらの現金が必要なのか」を知ることができます。
事前に赤字になることが分かっていれば、「あといくら現金による売上が必要になるのか」「現金が入金となるまで、いくらの現金が足りないのか」を事前に知ることができ、売上計画や場合によっては銀行からの運転資金の融資の必要性を把握できることになります。
また、現在の資金繰りがプラスの場合は、在庫の一括仕入れや設備投資などを行った場合の今後の資金繰りも今から把握できるようになり、投資計画に無理があるかないかを知ることもできます。
まずは、資金繰りの予想を立てることから、投資の計画を始めましょう。
実際の借入前に読んでおきたいページ