事業承継はどのような原因として困難になっているのでしょうか?
具体的には以下の4点を理由として挙げることができます。
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人口減により働く人口の減少、次の社長候補を育てられない
ご存じの通り、現在の日本は人口減少社会で、どこの企業に行っても人が足りないという状況が相次いでいます。
このような中、中小企業も当然ながら人材不足です。
従業員10名未満の小企業の就業者は1980年には2,281万人であったのにも関わらず、2003年には1,880万人と、実に400万人以上減少しています。
小さな企業ほど働く人の数が減っているのです。
さらに、55歳以上の従業員の数は1980年には554万人ですが、2003年には768万人と、2003年の従業員10人未満の従業員数の割合の実に40%以上の割合を占めています。
現在、この割合や従業員数の減少はさらに進んでおり、今後ますます、小規模企業の従業員の減少と高齢化が加速していくものと思われます。
これによって、小さな企業ほど、会社の規模はどんどん小さくなり、後継者を従業員の中から育てることができない、後継者不足という問題の原因となっているのです。
中小零細企業企業経営の大変さで、子供が親の会社を継ぎたがらない
中小企業の経営は決して楽ではありません。
中国や東南アジアなどのコストが安価な国での技術発展によって仕事を奪われる、親会社の動向で経営が左右されるなど、会社が小さければ、経営はかなり大変です。
筆者も小さな飲食店のオーナーですが、経営にはやはり資金繰りや様々な苦労がつきものです。
このような中、今、中小企業の経営者である70代の子供たちは、40代くらいになっています。
この世代は、就職氷河期の中からやっと就職を見つけた世代で、子供にも一番お金がかかる時期に差し掛かっています。
そのような世代が今の安定した仕事を捨てて、親の苦労を分かっていながら自ら苦労を背負いこむようなことをしたくないと考えている人も数多くいます。
「中小企業白書(2004年版)」によると、20年以上前に承継した者の場合は先代経営者の子供である割合が79.7%、親族以外の者の割合が6.4%であるのに対し、0~4年前に承継した者の場合は子供が41.6%、親族以外の者が38.0%となっています。(経済産業省HPっより抜粋http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h17/hakusho/html/17323210.html)
20年前から実に40ポイント以上も子供が事業を継いでいる割合が減少しているのです。
明らかに、事業継承最大の問題点は子供が事業を継続しなくなる傾向にあるためであるといえるでしょう。
また、親が事業を営んでいる人へ2004年に(株)ニッセイ基礎研究所が行った調査によると、「承継者は決まっておらず、自分は承継するつもりはない」と回答した人は半分近くの49.5%、「自分が承継することが決まっている」と回答した人はわずか8.3%であるとの回答がありました。
親の事業に対する子供の承継意識が希薄になっていることや、経営者である親も、自分の苦労を子供に背負わせたくないと考えている人が多いようです。
自分が経営してきた訳ではないのにいきなり多額の借金を背負わされる。
中小企業といえば、運転資金や設備資金の融資を受けている企業が大多数です。
2003年の従業員20名以下の小規模企業の借入金の依存率は長期・短期借入合わせて34.7%となっています。
会社の経営に必要な資金調達の3割以上を銀行借入の依存していることが分かります。
また、法人が銀行融資を受けるには、中小企業の場合には、経営者が連帯保証人となること一般的です
連帯保証人とは、借主と全く同じ返済義務を負う法的な立場ですので、経営者を連帯保証人とすることで、会社名義で借りたお金を経営者が持ち逃げしてしまうことがないように、また、経営者が借りたお金に対して責任を持って経営に励むようにする意味から、日本では歴史的に経営者の個人保証ということが、法人融資の際には行われてきました。
この経営者保証がある借入金を残したまま、事業承継を行うと、通常は新しい経営者が連帯保証人となるように銀行は求めてきます。
しかし、新しい経営者からすれば、自分が作った借金でもない借金についての返済義務を背負わなければならないことになってしまいます。
これは、家族がいる承継者にとっては非常な負担になってしまいます。
会社を承継したとたんに、自分が会社の借金を背負ってしまうことと同じになるためです。
このように、事業承継の妨げになっている側面的な原因として、経営者保証にあるということがよく言われています。
経営者の個人資産を注入している会社が多い
中小企業経営者にとっては、従業員は家族で、会社の経営と自分の家計は同じであると考えている人も少なくあります。
2004年時点で、従業員規模20名以下の小規模企業においては資金調達方法のうちの16%がその他の方法で資金調達を行っているというデータがあります。
その他の方法というのは、基本的には経営者の個人の預金や家族の預金です。
創業者からしてみれば自分が立ち上げた会社であるがために、自分や家族の預金を注入しても問題ないと考えている人多いでしょう。
しかし、承継者に自分の貯蓄や家族の貯蓄を切り崩してまで会社経営を行っていくだけの覚悟があるのかといえばそうではない場合がほとんどです。
やはり創業者である親と、子供の間には意識の違いがあり、この意識や経営の対する覚悟の違いも事業承継の問題点として挙げられるでしょう。
いく必要があるでしょう。