ファクタリングとは、企業の持っている売上債権をファクタリング会社へ売却して売上債権を早期に資金化する資金調達手段ですが、ファクタリング会社としてはビジネスで行っているものであるため、売上債権に手数料が発生します。
この手数料は銀行融資よりも高い手数料であることが大多数です。
銀行融資よりも資金化が手軽で素早いファクタリングですが、手数料が高いのがデメリットであるとも言われています。
では、ファクタリングの手数料とはどの程度で、どのような基準で決まっていくのでしょうか?
目次
ファクタリングの諸費用と手数料とは
ファクタリングにはファクタリングを行うにあたって金額にかかわらす発生する諸費用と、ファクタリング会社の取り分である手数料が発生します。
・ファクタリング諸費用がかかる
ファクタリングにはファクタリングを行うことそのものによって様々な費用が発生します。
主な費用は以下の通りです。
①事務手続き費用:10,000円程度
ファクタリング会社が登記等の様々な手続きを代行するための報酬が発生する場合があります。
②印紙代:4,000円程度
債権譲渡契約書に貼付する印紙の他、登記を行う場合には登録免許税などの印紙代金が発生します。
契約によって異なるもののおよそ4,000円程度の印紙代が必要になります。
③債権譲渡登記費用:60,000円~70,000円程度
ファクタリング契約によっては売上債権を譲渡する登記を行う場合がありますが、この際の司法書士に支払う費用がおおよそ60,000円~70,000円程度必要になります。
④登記抹消費用:30,000円程度
登記した売上債権が正常に回収された場合には登記の抹消を行う場合がありますが、この際の費用が20,000~30,000円程度必要になります。
ファクタリングを登記ありで行う場合には事務コストだけで10万円程度のコストが発生し、これは売上債権の金額がいくらであっても必要になる金額ですので、ある程度大きな売上債権でなければファクタリングを行ってもコストの割合が大きすぎることとなってしまします。
・掛け目とは
掛け目のことを手数料と呼ぶこともあるようですが、要するにファクタリング会社は売上債権そのままの金額を現金化してくれるわけではありません。
1,000万円の売上債権を掛け目20%で売却した場合には1,000万円×20%=200万円がファクタリング会社の取り分です。
自社に入金となってくるのは1,000万円(売上債権金額)—200万円(ファクタリング会社取り分)=800万円となり、この掛け目(手数料)の高さがファクタリング最大のデメリットであると言えます。
・売上債権担保融資(ABL)との違い
銀行では売上債権を担保とした融資があります。
会社が持っている売上債権を担保としてお金を融資するという制度ですが、この際も銀行が担保を評価する際には売上債権金額の70%~80%程度かけて算出された担保価格内で融資を行います。
1,000万円×80%(掛け目)=800万円(担保評価額)となりますので、銀行は800万円まで融資を行うこととなりますが、これはあくでも借入金です。
800万円お金を借りて800万円返済を行えば、担保となっていた1,000万円の売上債権は手元に戻ってきますので、売上債権が問題なく支払われれば1,000万円の入金があります。
一方ファクタリングは1,000万円の売上債権を800万円で売却しますので、ファクタリングを行った時点で200万円が手元に戻ってくる可能性はゼロです。
ファクタリングは審査の時間が早く資金化までに時間がかからないというメリットがある一方、売上債権担保融資(ABL)と比べて費用が圧倒的に高いというのがデメリットであるということが分かります。
手数料や金利はリスクマネジメント
・金利はリスクの度合いに応じて高くなっていく
銀行からお金を借りた際には金利が発生し、ファクタリングを行った場合には手数料が発生します。
銀行にとっての金利とは貸したお金が返ってこなくなった時のリスクに対する費用です。
例えば金利10%であれば、10人に1人は貸したお金が返ってこなくても赤字にはならないということですので、銀行はリスク10%の人まで融資を行うことになります。
一方、金利1%であれば100人に1人は貸したお金が返ってこなくても赤字にならないということですので銀行はリスク1%の人までしか融資を行いません。
ファクタリングもこれと同じです。
ファクタリングの手数料は売上債権のリスクの度合いに応じて決定します。
特に債権求償権なしと言って、ファクタリング会社に売却した売上債権が倒産や資金ショートによって履行されない際にはファクタリング会社が責任を負う契約がありますが、この場合には売上債権のリスクが高ければ高いほど高い掛け目が設定されて手数料が高くなります。
つまり銀行もファクタリング会社も債権が正常に返済されるかどうかのリスクの度合いに応じて金利や手数料(掛け目)を決定しているのです。
・債権求償権のないファクタリングは手数料が高くなる
債権求償権がない、つまり、売却した売上債権が正常に履行されなくても自社は責任を負わなくてよく、ファクタリング会社が責任を負ってくれるという契約では、ファクタリング会社が売上債権が履行されないリスクを負わなければなりません。
この場合には当然ながらファクタリング会社のリスクが高くなるため、掛け目を高く設定して手数料も高くなります。
ファクタリング会社は仮に売上債権が履行されなくても自社が損とならないような手数料を取ってリスクマネジメントを行います。
・債権求償権のあるファクタリングは手数料が低い
ファクタリングには債権求償権のあるファクタリングがあります。
債権求償権のあるファクタリングというのは売却した債権が正常に履行されなかった場合にはその債権が不履行となった責任を自社が負うという契約です。
売上債権の支払いが正常の行われなった場合は自社がファクタリング会社に対して売上債権の代金を支払うため、ファクタリング会社のリスクは債権求償権なしに比べて大幅に軽減されることとなりますので、リスクをマネジメントする費用である手数料は低くて済みます。
ファクタリングの手数料を決める要素
ファクタリングの手数料を決める要素としては以下のようなものがあります。
・債権求償権がありかなしか
前述したように、売上債権がデフォルトした場合のリスクを自社が負うのかファクタリング会社が負うのかによって手数料は変わってきます。
売上債権のデフォルトリスクをファクタリング会社が負う債権求償権なしのファクタリングは手数料が高く、売上債権のデフォルトリスクは自社が負う債権求償権ありのファクタリングは手数料が低く設定されています。
・売掛先の与信が低いか高いか
売上債権の与信が低いか高いかによって、手数料が変わってきます。
自社の売掛先が大企業で倒産のリスクが低いと判断されれば、ファクタリング会社にとって売上債権がデフォルトするリスクが低いと判断できるため、手数料を低くするように交渉して実際に手数料が低くなることもあるようです。
反対に、信用力の低い企業の売上債権は大企業と比べてデフォルトするリスクが高いため、ファクタリング会社にとってリスクが高いと判断され、手数料は高くなってしまう場合が多いようです。
・自社の与信状況
ファクタリング会社にとっては自社の信用状態がどのようになっているかも重要な要素です。
債権求償権がある場合はもちろん債権求償権がない場合でも会社が倒産してしまったら、いずれにせよ売上債権がデフォルトした場合のリスクはファクタリング会社が負わなければならないためです。
このため、自社の与信状況がよいと判断されれば手数料は低くなりますし、自社の与信状況が悪いと判断されれば手数料は高くなってしまいます。
これと同じ理由から売上規模が大きければ手数料が低くなりますし、売上規模が小さいと手数料は低くなってしまいます。
・売上債権金額が多いか少ないか
売上債権の金額が多いと手数料が低くなる傾向にあり、売上債権の金額少ないと手数料が高くなってしまう傾向にあります。
ファクタリング会社とすれば大きな金額の債権ほど収入が大きくなるため買い取りを行いたいと考えていますし、大きな債権を保有している会社はある程度の売上規模を持っており、倒産のリスクが少ないためです。
また、ファクタリングには金額の大小にかかわらず固定費として発生する諸費用があり、売上債権の金額が少ないと固定費の割合が多くなってしまい、売上債権を売却する企業の負担が高くなるため、倒産リスクが上がってしまうためです。
銀行融資でも金額が大きくなればなるほど金利は低くなっていきますが、ファクタリングにもこれと似たような傾向があるようです。
・2社間ファクタリングか3社間ファクタリングか
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2つの形態があります。
3社間ファクタリングとは売上債権の支払いを売掛先がファクタリング会社へ直接行うとう方法です。
売掛先としては本来であれば買掛先に支払うべき代金をファクタリング会社へ支払うだけですのでファクタリング会社とすれば売上債権が正常に支払われる可能性が比較的高いと言えますが、自社がファクタリング会社へ売上債権を売却したことを売掛先が知ってしまい、自社に対してマイナスイメージを持ってしまう可能性があるというデメリットがあります。
この難点を解決したのが2社間ファクタリングです。
2社間ファクタリングには売掛先は全く関与せず自社とファクタリング会社だけの契約になります。
自社は売却した売上債権が入金となったらその代金をファクタリング会社へそのまま送金するという方法によって支払いを行います。
3社間にないリスクとしては売上債権が入金となったとたんに倒産やお金を持って消えてしまうという点が挙げあられ、3社間ファクタリングと比べて2社間ファクタリングの方がリスクは高いと言えます。
手数料を決定するにあたって最も大きな要素が2社間か3社間のファクタリングかであると言われるほど、手数料に影響する項目です。
・初めての取引か2回目以降の取引か
銀行融資もファクタリングも何度も利用して正常に返済が履行されればその都度信用度は上がっていきます。
このため、まだ何も取引の履歴がない会社はファクタリング会社にとって約束通りお金を支払ってくれる会社かどうかが分かりません。
このため、初回取引の場合には手数料が高くなますし、初回の取引はあまり多くの金額のファクタリングを行わないために、初回の取引は年商の30%以内の金額までと決めているファクタリング会社も多くあります。
手数料の相場はどの程度か
それではファクタリングの手数料の相場はどの程度なのでしょうか?
手数料はおおよそ4段階に分かれているとイメージを持った方がよいでしょう。
・3社間ファクタリング
売掛先からファクタリング会社へ売上債権の代金が直接入金される3社間ファクタリングはファクタリング会社にとってリスクが低いと言えます。
そのため、3社間ファクタリングの手数料はおよそ1%~5%程度と非常に安価となっています。
なお、3社間ファクタリングは医療機関などが利用する医療報酬債権ファクタリング(国保やけんぽなどから入金されてくる医療報酬をファクタリングする)などで多く使用される方法で、民間企業よりも圧倒的にリスクが低いファクタリングであるため手数料は非常に安価となっています。
・2社間ファクタリング(2回目以降)
2回目以降の取引で、ある程度ファクタリング会社にとって信用力のある場合には手数料が5%~15%程度が相場であると言われています。
初回利用から信用を積み重ねれば2社間のファクタリングでも1ケタ台まで手数料を引き下げることは可能です。
・2社間ファクタリング(初回)
初めてファクタリングを利用する際には手数料が20%程度になることが一般的なようです。
初めてでは全く信用度がないため、ファクタリングに応じてくれる金額も年商の30%以内などの縛りがつきます。
・2社間ファクタリング(与信力が低い、売上債権の金額が少ない)
ファクタリング会社の審査の結果、自社の内容がよくないと判断された場合には当然ながら売上債権のデフォルトリスクが高くなるため手数料は上がってしまします。
また、売上債権の金額が少なくてもファクタリングの手数料は高くなります。
20%以上の手数料で、場合によっては40%程度とられてしまうこともめずらしくありません。
手数料などによって悪徳業者かどうかを判断しましょう
ファクタリングは様々な企業が進出していますので中には悪徳業者も存在します。
悪徳業者を見極めるポイントとして以下の点が挙げられますが、基本的には上記の手数料が適正相場ですので、契約に際して契約内容が適正相場かどうかを慎重に検討する必要があります。
・初めての取引であるのに2社間ファクタリングで手数料が異常に低い
・契約書がない
・債権求償権ありなのに手数料が30%以上
これらの業者は悪徳業者である可能性が高いため、取引を行わないようにしてください。
急ぎでなければ複数の業者へ相談して比較してみることをおすすめします。