売掛債権を手数料を支払って売却するファクタリングですが、ファクタリングを取り扱っている会社の数は今や無数にあります。
また、ファクタリングの形態によっても会社の選び方も異なってくるものです。
「ファクタリングを検討したいけどどの業者を選んでいいか分からない」という人はどのような基準でファクタリング会社を選択すればよいのでしょうか?
今回は、ファクタリング会社の選び方やファクタリング会社を選択する際の注意点について解説していきます。
目次
ファクタリングの仕組み
一口にファクタリングと言っても様々な形態があり、今や「ファクタリング」という単語自体、売掛債権を活用して資金化する全般的な方法というような広義の意味で使用されることも珍しくありません。
ファクタリングという言葉を使用することが多いサービス方式としては以下の3つの方式があります。
売掛債権を担保にして融資を受ける方式
銀行などの金融機関で「ファクタリング」と言った時には売掛債権を担保として融資を受ける方法を指します。
この融資のことを「売掛債権担保融資(ABL)」などと言います。
売掛債権と担保として登記し売掛債権の額面金額の7割程度の融資を受ける方法です。
売掛債権ですので、数ヵ月間の短期間で資金化になると見込まれている担保ですので、基本的に融資の期間は短期間です。
借りたお金を返済してしまえば、担保は解除されます。
例えば100万円の売掛債権を担保としてその70%である70万円を借りた場合には返済期日に70万円と利息を返済してしまえば100万円の売掛債権は担保から解除されます。
つまり、利息分しか負担はありません。
利息は1%~3%台の低利であることが一般的ですので、非常に低いコストで売掛債権を資金化することができる点がメリットです。
しかし融資には様々な審査があるため、実際の資金化までには数週間かかってしまうことがデメリットです。
売掛債権を売却して資金化する方式
手持ちに売掛債権を担保として融資を受ける方法が売掛債権担保融資(ABL)ですが、これはあくまでも借入れです。
一方、こちらの方法は売掛債権そのものを売却してしまうことで資金化する方法です。
この方法を狭義の意味で「ファクタリング」と言います。
ファクタリングは売掛債権を売却して所有権が移転しますので、借金ではないという点が売掛債権担保融資との違いです。
融資と異なり審査にはそれほど時間がかからず、最短で即日資金化に応じてくれる業者もありますので、資金化までのスピードという点では売掛債権を売却して資金化するファクタリングの方にメリットがあります。
ただし、ファクタリングは銀行融資と異なり手数料がだいぶ高くなります。
初めての取引ではファクタリングにかかる手数料が20%程度でファクタリングにかかる登記などの諸費用は5万円程度かかります。
例えば100万円の売掛債権を手数料20%諸費用5万円でファクタリング会社へ売却した場合には100万円-20万円-5万円=75万円が自社へ入金となります。
売掛債権を担保とした融資の際にはわずかな利息だけを支払うことに比べると大きなデメリットであると言えます。
売掛金に対して保証を受ける方式
売掛金とは支払期日までにはお金を払いますと約束した債権です。
しかし、取引先の資金ショートなどで期日通りの入金がないと自社の支払いに困ってしまします。
そこで、ファクタリング会社などに売掛金を保証してもらうという方法があります。
これを通常「保証ファクタリング」と言います。
保証ファクタリングは保証料を支払い、もしも期日までに支払いがなかった場合にはファクタリング会社が取引先に代わって売掛債権の代金を自社に支払います。
ファクタリング会社が代金を保証した後は売掛債権の所有はファクタリング会社へ移ります。
期日前に売掛債権を売却して資金化するのが一般的なファクタリングであることに対して、期日後に支払いがなかった時だけファクタリング会社が代金を支払うことを保証ファクタリングと言います。
一般的にファクタリングという時には上記2番目の売掛債権を売却して資金化する一括ファクタリングを指します。
一括ファクタリングには様々な形態があり、自社が何を重視するかによってファクタリングの形態も変わってきます。
では、一括ファクタリングの選び方はどのようなものなのでしょうか?
売掛債権売買 2社間ファクタリングと3社間ファクタリング比較
ファクタリングには自社とファクタリング会社だけの契約である2社間ファクタリングと、自社とファクタリング会社と取引先の契約である3社間ファクタリングがあります。
2社間ファクタリングとは
2社間ファクタリングとは自社とファクタリング会社だけの契約であり、売掛先は自社が売掛債権をファクタリング会社へ売却してことは知りません。
売掛金が取引先から入金となったら、自社はその金額をファクタリング会社へスライドさせて入金することでファクタリング会社は売掛債権の回収を行います。
2社間ファクタリングのメリット
①取引先に売掛債権を売却したことを知られない
②取引先が売掛金の支払いを行う際に入金口座が今まで通りに使える
③取引先が関与しないため資金化が早い
2社間ファクタリングのデメリット
①手数料が高い
2社間ファクタリングは取引先に自社の資金繰りが厳しいなどの危惧を持たれる心配や、入金口座の変更と言った面倒をかける必要がないため気楽ですが、取引先が関与しない分、ファクタリング会社とすれば資金回収に伴うリスクが高くなるため、手数料は3社間ファクタリングと比較してかなり高くなります。
初めての取引の場合には20%程度であることが珍しくありません。
3社間ファクタリングとは
3社間ファクタリングとは、自社とファクタリング会社と売掛先企業の3社での契約となります。
ファクタリング会社は自社とのファクタリング契約とは別に売掛先とも「売掛金の支払い期日になったら、ファクタリング会社へ代金の支払いをしてください」という契約を結びます。
ファクタリング会社は売上債権の資金回収を売掛先から直接支払いを受けることになります。
3社間ファクタリングのメリット
①手数料が安い
②売掛債権の支払いに自社は関与しない
3社間ファクタリングのデメリット
①取引先へファクタリングの事実が知られる
②取引先とファクタリング会社との契約や、入金口座をファクタリング会社へ変更するなどの面倒をかけてしまう
3社間ファクタリングはファクタリング会社からすると、売掛先から直接入金があるため2社間ファクタリングと比べてリスクが少ないと言えます。
そのため3社間ファクタリングの手数料は1%~5%程度が相場で、2社間ファクタリングと比べて圧倒的に低い手数料です。
ただし、取引先に契約や入金口座の変更などの手間をかけてしまうことや、取引先に自社の資金繰りを懸念されてしまうなどといったデメリットもあります。
償還求償権があるかないか
償還請求権とは売掛先が倒産した際に、自社が売掛代金の代金を弁済しなければならないということです。
償還求償権なしのファクタリング
償還請求権がないファクタリングとは、売掛債権が期日通りに支払われなかった場合に、自社には一切責任がなく、ファクタリング会社がその責任を負うということです。
一度ファクタリングをしてしまえばあとは売掛債権が履行されようがされまいが全く関係ありません。
償還求償権ありのファクタリング
償還請求権があるファクタリングとは売掛債権が期日通りに支払われなかった場合の責任は自社が負うということです。
ファクタリングを行ってもファクタリング会社に売却した債権が期日通りに履行されなかった際には、自社が売掛先に代わってファクタリング会社へ売掛債権の代金の支払いを行わなければならないため、売掛先の支払いリスクに常にさらされることになります。
取り扱い額がどのくらいか
ファクタリング会社によっては、ファクタリングに応じる限度額が数十万円~100万円程度の少額しか対応していない会社もあります。
また、その一方で数億円までの高額のファクタリングに応じているファクタリング会社もあります。
どちらがファクタリング会社として健全かということは一口にいうことはできませんが、自社の売掛債権の規模にあった会社を選択するようにしましょう。
手数料がどの程度か
手数料は凡そ以下のような形で決められています。
手数料が高い | 手数料が低い | |
2社間か3社間か | 2社間 | 3社間 |
償還請求権がありかなしか | 償還請求権なし | 償還請求権あり |
金額の大小 | 少額 | 高額 |
初めての取引か2回目以降の取引か | 初めての取引 | 2回目以降 |
上記のように決まっていますが、多くのファクタリング会社ではなにも信用のない初回の取引では100万円までの取り扱いで手数料が20%程度というのが相場のようです。
自社のファクタリングは上記の手数料が低い項目をすべて満たしているのに手数料が高い気がすると感じた場合には、ファクタリング会社と相談するか、複数社へ見積もりを依頼してみましょう。
面談時や電話応対時の印象も重視しよう
面談時や電話での相談時の相手の印象もファクタリング会社を選択する際の重要なポイントの1つです。
継続的にファクタリングを行う場合やなどには長い付き合いになりますし、審査の際には面談によって手数料も変わってくるためです。
一方的に話をして自社の話を聞いてくれずに、手数料を申し渡してくるような場合には他の業者も考えた方がよいかもしれません。
悪徳業者には要注意
ファクタリング会社の中には銀行系の信用できる業者もありますが、ヤミ金のような悪徳業者も存在しますので、ファクタリング会社を選択する際に最も注意しなければならないのは実はこの点です。
契約書がない
契約の際に契約書の交付がないような場合には悪徳業者の可能性があります。
契約書に記載のないような費用を後から請求される場合も少なくないようです。
あまりにも適正価格からかけ離れた掛け目
2社間ファクタリングの手数料は20%程度が相場と言われていますが、初回の取引であるにも関わらず手数料が一桁台のような異常に低い手数料の場合には悪徳業者の可能性もありますので注意が必要です。
後から膨大な費用の請求が来るおそれもあります。
2社間ファクタリングであるにも関わらず償還請求権がある
2社間ファクタリングの初回手数料は20%程度ですが、このような2社間ファクタリングには償還請求権がないのが一般的です。
しかし、2社間ファクタリングで手数料も20%程度であるにも関わらず償還請求権があるような場合には悪徳業者である可能性が非常に高いですので、このような会社とは取引を行わないようにしましょう。
ファクタリング会社が倒産したらどうなる?
ファクタリング会社が倒産したら、売掛先が支払いを免れるようなことはありません。
売掛債権はファクタリング会社にとっては資産ですので、資産はファクタリング会社へお金を貸していた銀行などの債権者のものとなります。
このため、売掛債権の所有者がファクタリング会社の債権者の所有に移りますので、売掛債権は正常に履行しなければなりません。
一方、自社がファクタリング契約後にファクタリング会社が代金支払い前に倒産してしまった場合には代金の回収は非常に難しいと考えた方がよいでしょう。
ファクタリング会社がお金の支払い前に倒産してしまった場合には自社はファクタリング会社に対して売掛債権売却代金分の債権を保有していることになります。
このため、債権者として他の債権者と同様に債権者会議で倒産したファクタリング会社の資産をどのように按分するかを話し合います。
一般的に倒産した会社には債務以上の資産はまずありませんので、回収できたとしても代金の1部もしくは1円も回収できない可能性もあります。
このようなことがないように、財務的に健全経営のファクタリング会社を選択することが重要です。
ファクタリング会社・業者の選び方・注意点 まとめ
ファクタリング会社を選択する際に重要なことは自社がどのような形のファクタリングを希望するかです。
取引先にファクタリングの事実を知られても全く問題ないという人は3社間ファクタリングを選択するとか、取引先が倒産したら自社の商売も成り立たなくなるため償還請求権があっても構わないような場合には償還請求権ありのファクタリングを選択したほうが手数料は低く済みます。
業者を選択する際には業者の評判を良く調べ、悪徳業者や財務的に不健全な評判の悪い会社を選択しないように注意しましょう。