中小企業の資金調達手段は金融機関からの融資が主流ですが、近年「クラウドファンディング」という手法が登場しました。
クラウドファンディングは投資型と非投資型の2つの形式があり、そこから更に5つに分かれます
目次
投資型
- 株式型
- 貸付型(融資型)
- ファンド型
非投資型
- 寄付型
- 購入型
この内、実際のシェアとして大きいものが「貸付型」と「購入型」となっていることから、これらの資金調達手法を考察し、信用金庫からの借入との比較を行ってみましょう。
クラウドファンディングの主流「貸付型」と「購入型」の特徴を比較
貸付型クラウドファンディングとは?
プロジェクトごとに募集が開始され、投資者はファンドに拠出し、募集者はファンドから融資を受ける形となります。
資金使途は不動産購入資金や運転資金が目立ちます。
融資期間は様々ですが、数ヶ月という超短期案件もあり、期間中は利払いを行い、期日に元金を一括返済するパターンが多く見られます。
貸付金に対する保全としては不動産担保を徴求する案件もあるなど様々です。金利は5%〜10%前後といったところで、決して低い金利負担とはいえない水準です。
メリット:金融機関に頼らない資金調達手段
募集者のメリットとしては金融機関融資に頼らず資金調達ができ、事業を開始する事ができる点です。
金融機関からの借入が望めない時に投資チャンスがある場合、検討する価値はあるでしょう。
デメリット:調達費用が高い
やはり金利負担でしょう。5%〜10%前後の金利設定はもはや消費者ローンやカードローンの水準です。
数ヶ月の短期間の調達であれば金利負担はそこまで大きくはありませんが、仮に1年償還で1億円の調達の場合、金利負担は1,000万円と巨額になります。
投資対象は不動産が多く見られますが、実際に年率10%以上で運用することは難易度が高いと思われます。
売却目的であれば合理性が高まりそうですが、確実に売却できるのであれば、金融機関の融資を受けられる可能性は高まるため、わざわざクラウドファンディングを行うことも疑問です。
購入型クラウドファンディングとは?
プロジェクトごとに募集が開始され、投資者はプロジェクトの成果物を購入する形で資金を拠出します。
実質的な代金の前払いです。募集者は投資者からの資金を元にプロジェクトの成果物を生産・構築し、出資者にリターンします。
メリット:評判経済を活用した宣伝ができる
募集者のメリットとしては現金をリターンする必要はなく、生産物での返礼となりますので客観的に見れば「前払い形式の物販」です。
前払いを受けてから生産できることは大きな利点で、運転資金を確保できでいる状態は大きな安心感がありますし、何しろ販売先も確定しています。
それよりも大きなメリットはクラウドファンディングの募集活動そのものが広告宣伝となることです。
ファンドの募集内容で当該プロジェクトのアピールはもちろんですが、自社の概要やコンセプト、生産者の想いなどをアピールする事ができます。
応募者はそのまま募集者の「ファン」と言えますので、SNS上で支援を行ったことを拡散する人は多くいます。
現代の商売の要となる「評判経済」のスキームを使用することのメリットは多大なものがあります。
デメリット:資金調達のパフォーマンスは良い訳ではない。
私の勤務する信用金庫でもクラウドファンディング業者と連携していますが、「購入型クラウドファンディングの目的は主に広告宣伝」と業者が明言しています。
応募者へのリターンは現物ですがファンディング業者には手数料を支払う必要があり、資金調達のパフォーマンスとしてはあまり良くないようです。
信用金庫からの融資による資金調達と比較して
そもそもクラウドファンディングを行おうと思うタイミングは、当然に資金調達を行う必要性が発生した時でしょう。
その資金使途が新商品・サービスの開発であれば購入型を選択することには合理性があります。
資金調達と宣伝広告を同時に行えることは大きなメリットであり、生産コストが調達額を上回ったとしても、それが広告宣伝費として割安な水準であれば損はないと考えられます。
一方で貸付型を選択する場合は、信用金庫からするとかなり疑問符がつきます。現在の事業性融資の貸付金利の相場は1%〜3%(正常先と仮定)くらいだとして、5%〜10%前後の金利となるとかなり高水準と言え、消費者ローンと同じレベルです。
業績の悪化や過剰借入等で金融機関からの借入はできないけれど、不動産への投資を行いたいとの希望がある場合は選択肢としても良いかもしれません。
信用金庫からの融資を最優先に考える
クラウドファンディングは近年拡大してきた資金調達手法で、事業者にとって資金調達方法が多様化することは基本的には朗報であると思います。
しかし、貸付型に関しては金利負担が大きいと言わざるを得ず、事業からの利益が圧迫されることになります。
特に賃貸用不動産を建築し運用益を得ていく場合、賃料収入の上限はほぼ決まっていることから、融資金利は直接運用益を左右する要素であり、いかに低金利で調達できるかが極めて重要です(そのため不動産業者は金利には強いこだわりを持っています)。
その新事業について経済合理性があり、担保物件として十分であれば、業況に懸念があっても信用金庫は相談に乗ってくれるはずです。
そして大抵の場合、信用金庫からの融資の方が低金利となると思われます。
「きっと貸してはくれない」との思い込みは一旦捨てて、真に利があると考える事業であれば是非信用金庫に相談してみてください。クラウドファンディングに依頼をするのはそれからでも遅くはありません。