中小零細事業者が信用金庫から事業性融資を受けるべき理由とメリット
信用金庫はそもそもが中小企業向けの金融機関
信用金庫はその目的を「3つのビジョン」として掲げています。
- 中小企業の健全な発展
- 豊かな国民生活の実現
- 地域社会発展への奉仕
これは全国の信用金庫共通のものとなっています。
そもそも信用金庫は、銀行に取り合ってもらえない企業規模の小さな事業者への金融サービスの提供を目的に設立された歴史があり、中小企業を専門とすることが前提となっています。
また信用金庫法により大企業との融資取引はできないようになっているなど、まさに中小企業に特化した、中小企業のための金融機関なのです。
この記事を読んでいるあなたはおそらくは中小企業の経営者であると思います。あなたこそが、信用金庫のど真ん中のお客様なのです。
信用金庫はあなたへのソリューション提供を真摯に取り組みます。それが彼らの存在理由だからです。恐れずに堂々と信用金庫へ訪問しましょう。
信用金庫は地銀以上に地元出身者で固められた組織
信用金庫は銀行と違い中小企業のための金融機関であるとのお話をしましたが、社員の構成についても顕著な違いがあります。
都銀と地銀とでは差はありますが、あなたのお住いの近隣の銀行には、地元の方が何人いるでしょうか。おそらくはほとんどいないはずです。
銀行は支店網が全国にあり、人事異動により転勤を繰り返しています。銀行業界において同一支店への長期配属は不正予防の面から推奨されておらず、2〜3年での転勤が普通です。よってお顧客からは慣れた頃に担当が変わって困る、とのお叱りを受けることになります。
一方で信用金庫も人事異動はあり、同じように2〜3年で転勤はしますが、信用金庫の職員はほぼ全員が地元の人物である点が銀行との違いで、営業エリアもほぼ地元となります。つまり、転勤はあれど地元から離れるわけではない、ということです。
よって、何か不誠実な対応を行うとその噂は瞬く間に地元に広がり、信用を大きく失墜することになるため、疎かな対応はできないという強烈なバイアスがかかります。
なにより地元に骨を埋める覚悟で信用金庫に就職しているため、地元企業との連帯感は銀行に比べて強いものがあります。
地元の祭りや運動会等のイベントでは、自分の担当の顧客または担当であった顧客と顔を合わせることが頻繁にあります。
そういった公私ともに「顔」が繋がっている相手方に対し、人はいい加減な対応をすることができません。信用金庫が地元民の集まりであることは、実は中小企業にとって最高の材料なのです。
銀行と比較して親身で融通のきく融資姿勢
現在の地銀以下の金融機関の至上命題は「事業性評価」です。これは簡単にいうと「決算書等の数値面の評価だけではなく、中小企業の販売網や技術力等を評価した上で金融機関はソリューションを提供し、企業の再生と発展に寄与するべし」ということです。
つまりは中小企業に寄り添って問題解決の手伝いをしなさい、というオーダーが国から出ており、その対応に金融機関は躍起になっています。
簡単に「寄り添う」といっても、これはかなり人的コストがかかる作業であり、また時間もかかります。
一面的な見方になりますが、銀行はこれまで決算書等の数値を重視する傾向がありました。決算書が良ければ貸す、悪ければ貸さない。また決算書が悪くなったら融資金利を上げるなど、ドライな対応を行うことがありました。
これを一概に責めることはできません。彼らは株式会社の社員であり利益追及を行うべきだからです。
ですが近年の「寄り添う金融機関」というパラダイムシフトに対して、そのコストフルな実務を行っていくことは難しいでしょう。
そもそも中小企業に対し人員が不足しているはずですし、即数字に反映し辛い活動を事業性評価は要求するからです。
一方で信用金庫は国に言われるまでもなく「寄り添う金融機関」を存在の目的として長年営業を行ってきました。地元の中小企業にどれだけ寄り添えるかを存在意義として活動を継続してきたのです。
ですので伴走者としての経験値が違います。おそらくは金利等の条件では信用金庫は銀行に劣後すると思われますが、中小企業の課題に対し親身に寄り添い共に歩んでいく姿勢は信用金庫の方が上です。
企業経営者としてそれがどれほど心強いかは語るまでもないでしょう。
信用金庫は「事情」が最終決裁者まで通りやすい
銀行と比べて信用金庫は規模が小さいことが一般的です。当然にその組織体もコンパクトになっています。
銀行と比べて現場からトップまでの距離が短く、意見具申は比較的しやすい形態となっています。
また営業範囲が決まっていることから、信用金庫のトップは営業範囲内の企業について広く深い知識を有しています。
企業の歴史は当然として代表取締役の配偶者や子供などの情報等、地元密着ならではの知識には舌を巻くことが多々あります。
あなたの企業が決算書上全く懸念ないのであれば融資審査はスムーズに行われるでしょう、しかし何がしかの懸念がある場合、金融機関は対応を迫られます。
その際、信用金庫は決算書上だけでなく、その人の人脈、親類、来歴、取引業者、所属団体等、様々な要素を検討します。銀行でも当然に検討すると思われますが、信用金庫ではその要素に対し、最終決裁者である役員が強い理解を示すことが違いです。
決算書に現れないそれらの要素が当地においてどれだけの信用力を発揮するのか、役員は地元金融マンとしての長い経験からその「価値」に具体的な信ぴょう性を見出します。
これは信用金庫ならではのウェットな話ではありますが、中小企業としては福音でしょう。得てしてそういった無形の事情を重視して欲しいと思われる経営者は多いのではないでしょうか。
数値では現れない定性的情報が通用しやすいのが信用金庫なのです。
信用金庫が銀行に劣る点 デメリット
信用金庫から事業性融資を受けるメリットについて、「中小企業専門の金融機関」であり「構成員はほぼ地元民」であるため「親身な融資相談姿勢」と「企業の事情を深く勘案」してくれることだと説明させていただきました。
企業が融資を受けるにあたって最大の懸念は借りられるのか否かです。その点で限界まで取り組んでくれる信用金庫へ相談することのメリットは大きなものがあります。
一方のデメリットとしては、銀行融資よりも平均して金利が高くなることが挙げられます。比較して資産規模の小さい信用金庫は金利競争の面で劣後してしまいます。
町の電気屋さんと大手電気店との価格差があるのと同じ構図です。優良な内容の会社であれば銀行はかなりの低金利を提示してきますが、私の経験から信用金庫は銀行との金利競合にはなかなか勝てません。
また、融資に対する保全の面でも銀行の方が「緩い」傾向があります。これも金融機関の規模の差が出るところで、融資が焦げ付いた時の金融機関へのダメージは相対的に信用金庫の方が大きくなるためです。
よって融資に対する保証・担保は信用金庫の方が厳しい要求をしてくる可能性が高いと考えられます。
信用金庫からの融資メリット 銀行融資と比較 まとめ
現在の金融機関はその形態によらず、顧客の問題解決を行うことを国から求められています。ですのでどの金融機関に行ってもそれなりに真摯な対応は受けられるものと思われます。
しかし、信用金庫は中小企業に特化した金融機関として存在し、長年地域企業のために営業を続けています。
中小企業を定性情報に至るまで深く理解し、継続的に支援することにおいては一日の長があります。
金利等の条件面では銀行に劣る可能性は高いですが、目先の支払利息の多寡のみで借入先を決める中小企業経営者はいらっしゃらないでしょう。
資金調達が企業の生命線である以上、伴走してくれる金融機関に求めるべきは親密感です。信用金庫はあなたの会社の最大の理解者となれます。それを目的として地域のみに存在しているのです。